2019年の世界経済とマーケット
景気は減速したが株価は上昇
2020年のマーケットは、景気の持ち直しと世界的な低金利政策の継続に支えられて、株などのリスク性資産価格が一段と上昇すると予想する。米中関係など、国際情勢は引き続き市場を不安定化させるリスクはあるが、トランプ米大統領が11月の米大統領選挙に向けて経済と市場の安定を図ることを優先課題とするならば、ネガティブな圧力は2019年よりも少なくなるだろう。
むしろ、物価の安定傾向が続くなかで、金融政策の転換が遅れるのであれば、リスク性資産価格はバブル的な上昇となる可能性もある。
2019年のマーケット環境を振り返ると、世界経済は減速傾向を辿ったものの、米国が利下げに転じるなど、世界的な金融緩和傾向が強まった。この結果、金利の低下が進み、景気減速下にもかかわらず株価は上昇した。
景気に関しては、製造業の減速が目立った。減速の背景としては、(1)循環的に在庫調整局面に入るタイミングだった、(2)中国の内需が減速傾向を辿った、(3)米中貿易摩擦、が挙げられる。
在庫循環の観点で世界経済を俯瞰すると、2019年4-6月期頃より在庫の伸びが出荷の伸びを上回る在庫調整局面に入る地域が目立ってきた。米中貿易摩擦の影響は、農業を含む両国の輸出関連企業にダメージを与えたが、一方で中国からの迂回輸出(ベトナムなど主にアジア諸国)や、代替輸出で潤った国(主にユーロ圏)もあり、グローバルな生産減速の主因になったとは考えにくい。しかし、米中貿易摩擦による不透明感が、企業活動を抑制した面は否めない。受注など生産活動に先行する統計は回復に転じておらず、まだ生産回復の兆候は見えていない。
製造業の減速傾向が続く一方、非製造業は総じて堅調さを保っている。それを支えている個人消費は、欧米を中心に底堅く推移している。消費を支えているのは、(1)記録的な低失業と、それに伴う賃金の堅調な伸び、(2)消費者の高い景況感、(3)低金利と株などの資産価格の上昇だ。特に米国では、この3条件が揃っており、今年のクリスマスセールスも好調に推移した。足元までのところ、欧米経済は、消費の勢いがやや減速してはいるものの、潜在成長率程度の成長率を保っている。