米FRBが金利据え置き、ボルカー氏追悼に見るパウエル議長の「決意」金利据え置きを決めたパウエルFRB議長の「決意」とは Photo:Federal Reserve

米FRBが金利据え置き決定
トランプ氏が不満を漏らさない不思議

 米連邦準備理事会(FRB)は10-11日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、フェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標を1.50~1.75%で据え置くことを全会一致で決定した。金利据え置きは4会合ぶり。金融市場関係者の多くは、今回のFOMCでは金利が据え置かれるとみていただけに、決定そのものに大きなサプライズはなかった。

 FOMC会合後に発表された声明文では、米景気動向について「米経済は緩やかに成長し、雇用も底堅く拡大している」とし、金融政策についても「現在のスタンスが景気拡大の維持に適切」とするなど、前回会合の声明文と同じ表現が維持された。一方、今後の金融政策については、景気見通しに与える影響を監視していくとの文言に、海外動向とインフレ圧力の抑制を注視するという2つの表現が追加された。

 FOMCメンバーによる政策金利見通し(ドット・チャート)では、前回(9月)と異なり、メンバー間で意見の相違は少なかった。ドット・チャートの回答者17人のうち13人は、来年(2020年)までFF金利は現在の水準(1.50~1.75%)のままである見込みと回答。残り4名は1回(25ベーシスポイント・bp)の利上げが実施される見込みと回答した。

 翌年(21年)になると、現在の水準から3回(計75bp)の利上げを見込む者が3名、2回が5名、1回が4名、金利据え置きが5名と、回答結果にばらつきが見られたが、利下げを見込む者はゼロ。22年や長期(Longer run)でも利下げを見込む回答はなく、FF金利を現在の水準より引き下げる意向を示唆した者はいない結果となった。

 パウエル議長はFOMC声明発表後の会見で、現在の政策金利は適切であり、米経済が見通し通りに拡大するなら、現在の金利水準が今後も適切となるだろうと述べるなど、FF金利を当面据え置く意向を表明。7月からの3会合連続の利下げが、景気下振れリスクへの保険となり、経済成長や強い雇用、インフレ2%目標への支えになると自賛した。

 興味深いのは、米トランプ大統領が、ツイッターでFOMCの今回の結果について不満を示さなかったことだ。同大統領は、9月のFOMC声明の発表直後、利下げが決まったにもかかわらず、パウエルFRB議長を名指しし、「根性なし。判断力なし。展望なし!(No “guts,” no sense, no vision!)」などと批判。一方、今回は金利据え置きが決まり、ドット・チャートでは追加利下げの意向が示されなかったにもかかわらず、FOMC声明発表直後やパウエル議長の会見中にFRBを批判するツイートがみられなかった。