名医やトップドクターと呼ばれる医師、ゴッドハンド(神の手)を持つといわれる医師、患者から厚い信頼を寄せられる医師、その道を究めようとする医師を取材し、仕事ぶりや仕事哲学などを伝える。今回は第23回。肝臓がんに対するラジオ波治療の第一人者として知られる椎名秀一朗医師(順天堂大学大学院医学研究科画像診断・治療学教授)を紹介する。(医療ジャーナリスト 木原洋美)
100度の熱で切らずに治す
体への負担最小限の治療法
「最優先しているのは、きちんと、かつ安全に治すこと。その上で、患者さんの体に与える負担をいかに最小限にできるか。最終的な解答など存在しない問題ですが、日々その答えを追求しています」
肝臓がんに対するラジオ波治療の第一人者として知られる椎名秀一朗先生(順天堂大学大学院医学研究科画像診断・治療学教授)を見ていると、「只管打座(しかんたざ)」という言葉を思い出す。ただひたすら、心を込めて、一所懸命に、という、座禅に取り組む心構えを指す禅語だが、先生が医学に取り組む姿勢にも通じるものがあるように思う。
究めようとしてきたのは肝臓がんに対するラジオ波治療。局所麻酔下に皮膚を2、3ミリ切開し、超音波画像でがんを確認しながら直径1.5ミリの電極針を刺入し、ラジオ波を流して電極の周囲に約100度の熱を発生させてがん細胞を焼き殺す「ラジオ波焼灼術(radiofrequency ablationを略してRFA:アール・エフ・エイとも呼ばれる)」だ(以下、「ラジオ波治療」とする)。がん全体を残らず焼き切ればがんを治すことができる。