世界28の言語で翻訳された全仏ベストセラーシリーズ最新刊の日本語版『猫は気まぐれに幸せをくれる』が刊行されました。
寝たいだけ寝て、暇さえあれば物思いにふけり、嫌いな奴が来たら姿をくらませる。飼い主をたっぷり困らせたかと思うと、欲しいものがある時だけ従順なフリをして、実は猫のほうが飼い主を選んでいる……15年間、どんな時でもそばにいてくれた愛猫に教わった、もっと楽しく快適に生きる秘訣を『猫は気まぐれに幸せをくれる』から一部抜粋・再編集してお送りします。

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猫は決して服従しないが……

ステファン・ガルニエ(Stéphane Garnier)
1974年、フランス、リヨン市生まれ。レコーディング・エンジニアとして長く働いた後、現在は作家として小説、エッセー、ドキュメンタリーなどを手掛けている。愛猫ジギーとの暮らしを満喫し、その行動から日々得られた気づきをまとめた『猫はためらわずにノンと言う』(ダイヤモンド社)がフランスで20万部を超えるベストセラーとなり、世界28の言語に翻訳された。腕に抱いているのが愛猫のジギー。

 猫はなぜほかの動物に従わなければならないかがわからない。
 それが二本足で歩く動物だったとしても。
 ――ハンター・S・トンプソン(ジャーナリスト、作家)

 猫を飼っている人なら皆知っているように、猫に命令なんてできない。よくて交渉できるくらいだ。
 服従させることができる犬とは違い、猫との関係には上下がまったくない。お互いを尊重して築く対等な関係なのである。猫との関係では、それぞれが心地よいと思う領域を重ね合わせてぴったり一致したところを日々広げていくイメージなのだ。

 家から出られない猫は別として、自由に外へ出る猫は、自分の生活と幸せを飼い主と分かち合いたいと思い、好きで帰ってくる。
 しかしどんなに猫に好かれていようと、猫に言うことを聞かせるなどもってのほかだ。
 アメリカの実業家、ジェフ・ヴァルディスが
「猫は犬より賢い。雪の中でソリを引かせるのに、猫を八匹そろえられるわけがないのだから」
 と言ったように。

 たまに、自分の得になると思えば従順なふりをすることもある。そしてチャンスをうかがう。
 人間だって戦時下や圧政、または職場などで従順なふりをしたほうがいいこともあるだろう。猫がするように、目的を達成するには勘づかれてはいけない。
 猫のやわらかい肉球は私たちに優しさと愛情をくれるが、同時に自分が欲しいものを手に入れるためでもある。
 一日の終わりにおいしいものをもう少し余計にもらうためなら、たいていのことはやれるものだ。

 服従しないために、その「ふり」をすることもある。

 ルイ・ペルゴーが
「猫のようなやわらかい手をして服従しているふりをした」
 と言ったように。