石炭の採掘中国の「脱石炭」への取り組みが失速している Photo:George Steinmetz/gettyimages

 【北京】中国が目指す「脱石炭」の取り組みがここにきて失速している。世界最大の二酸化炭素排出国である同国が、気候変動対策で世界をリードするとの野望より経済成長とエネルギー安全保障を優先しているためだ。

 中国は最大の汚染エネルギー源である石炭の使用を大幅に削減すると表明しているが、石炭消費は過去3年に増加に転じ、再びピーク水準に迫っている。中国が建設を進める石炭火力発電所の能力は、同国を除く世界全体を合わせたものより大きい。

 米国との貿易戦争の打撃を和らげるために進めているインフラ投資が石炭消費を押し上げている。一方、最大の石油輸入先であるサウジアラビアの石油施設が攻撃を受けた9月以降、中国は石炭利用に対する姿勢を緩めており、外国産石油への依存度の高さが浮き彫りとなった。

 中国が再び石炭重視の姿勢に転じていることを受け、炭素排出量削減の本気度に懐疑的な見方が強まっている。また、ドナルド・トランプ米大統領が温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」からの離脱を通告したことで、協定の維持に向けて中国に頼る欧州連合(EU)からは不満の声が漏れる。中国は2020~30年までの目標を達成する見込みだが、石炭に対するその曖昧な姿勢は、グリーンエネルギー目標の達成や、EUと足並みをそろえ一段と野心的な排出目標を掲げることについて、意欲が後退していることをうかがわせる。