背伸びはしない！

  算数・数学の苦手を克服しようとするときに、いきなりレベルの高い問題を解いてはいけません。
  背伸びをしていきなり応用の演習をしてもほとんど身につきません。
  中学3年で習う多項式の計算を理解していない人が、いきなり、高校で習う微分積分を理解しようとしても無理があります。

  私自身の経験を言えば、東大を目指して頑張っていた高校3年生のとき、数学の成績がなかなか上がらずに東大をあきらめようと思ったことがあります。
  数学がなくても受験できる私立大学にしぼって受験しようとしたのです。

　しかし、第1回で書いたように、難しい問題集で勉強するのをやめて、高校の教科書で基礎から学習するようになってからは、数学の理解が進み、成績も上がっていきました。

「東大を受験するのだから難しい参考書を使って勉強しなければならない」という思い込みから脱却し、「東大のような難しい大学を受けるのだから、なおさら基礎からきちんと実力を積み上げていかなければならない」と考え方を転換したのです。

  苦手な算数・数学を得意にするなんて無理と思っている方もいるでしょう。
  しかし、自分がわからなくなったところに立ち戻って基礎からやり直してみると、算数・数学は徐々に得意になっていきます。

  私の指導している生徒が、先日うれしい言葉を言ってくれました。
 「先生、僕、算数が好きになったよ。自分で解けるようになった」という言葉です。

　一度嫌いになってしまった科目を好きにすることは容易なことではないので、その言葉を聞いたとき、私はとてもうれしく感じました。

  その生徒はもともと算数が嫌いで苦手な生徒でした。
  中学受験を志していているのですが、大手の塾で習っている内容がわからなくなってきて、成績も下がってきたときに、私が家庭教師の依頼を受けて指導しはじめたのです（ちなみに、私は塾の経営と家庭教師を併行して行っています）。

　私は基礎固めに重点をおいた指導を続けました。それを続けているうちに、以前とくらべてさまざまな算数の問題を自力で解けるようになってきたのです。

  算数や数学に苦手意識を持っている方は、もう一度つまずいたところから始めてみてはどうでしょう。
  中高生はもちろん、専門学校生、大学生、ビジネスパーソン……すべての方に算数・数学の楽しさを味わってもらえたら……。

　5回にわたって連載いたしましたが、読んでいただいた方には心から感謝をいたします。誠にありがとうございました。

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