そんな条件で会社のお金を貸すわけですから、自分でも「経営者としてはどうなんだ」とあきれるような判断です。しかし学生時代からの友人ですし、アニメーション業界の一員として苦しい会社を支援したいという気持ちからの融資でした。長い間お世話になった会社への恩返しの意味もありました。

 少しでも経営が楽になればと、2014年にカラーの主要スタッフに関わりの大きい『トップをねらえ!』『トップをねらえ2!』『フリクリ』の原作権の買い取りも山賀社長(当時)と武田取締役に申し出ていました。その状況下のガイナックスでは新作の制作は困難でしょうし、作品の将来も考えてのことです。

 当初は山賀社長も喜んでその話を進め、買取条件も固まりかけていたのですが、ある日突然、当初の6倍になる高額の買取価格を提示されました。

 納得のいく値上げの理由説明もなく、こちらが困惑しているうちにその話はうやむやになり、2015年に3作品とも僕らの知らぬ間に他の会社に権利が売却されていました。その年の5月にガイナックスに銀行が介入し、大規模な人員整理を行ったという話も聞いていましたから、彼らは何よりお金が必要で、より高い額で買う会社へ売り込んだのでしょう。作品の展開や制作スタッフの気持ちよりも金額を優先してしまったのだと思います。

 僕が関わっていない作品も2014年に原作権が別会社に売却されていました。

 作品の権利の散逸が始まっていることから経営状態の把握が必要だと感じ、ガイナックスに経営状況の説明と返済計画の提示を幾度か求めました。状況によっては、さらなる支払い猶予や経営支援も視野に入れてのことです。

 しかし、先方からは「経営状況に問題はなく、予定通りに返済する」という回答があっただけでした。

ガイナックスからの
支払いと返済が突然に滞った

 そんな状況下の2014年11月に「株式会社福島ガイナックス(現・株式会社ガイナ)」が、僕らの知らないうちに設立されます。同社は当初ガイナックスの完全子会社でしたが、いつの間にか浅尾(芳宣)社長に全ての株が譲渡され、資本関係が解消された別会社となっていました。

新世紀エヴァンゲリオン
©カラー/Project Eva.

『エヴァ』と全く関係のない、ガイナックスという名を冠した別会社ということでした。しかし、福島ガイナックスはことあるごとに、周囲の人には『エヴァ』と関係があるかのようにみえる振る舞いをしていました。

 後にガイナックスが問題を起こしたときに福島ガイナックス(当時)は、「ガイナックスとは資本関係はなく、完全に独立運営している」とコメントしていたようです。それならば子会社から独立した時に、ガイナックスの看板を外しておいた方が良かったのではないかと思います。

 現に、今はさらに無関係な企業の傘下に入り「株式会社ガイナ」という微妙な社名に変更されています。

 そして2016年4月、ガイナックスからの支払いと返済が突然に滞りました。説明を求めても先方が応じることがなく、山賀社長(当時)に僕から直接メールしても電話をしても一切連絡がありませんでした。そしてそんな中で、日本の各所にガイナックスの名前を冠する会社が増えていきます。

 福島ガイナックス設立の少し前、2014年5月には、「米子ガイナックス」が鳥取県に設立されていました。2016年4月には「株式会社GAINAX WEST」が兵庫県、同年7月には「株式会社ガイナックス新潟」が新潟県に、僕らには何も知らされないまま設立されていきます。