郵政人事は一新され、安倍政権は財務省出身の坂篤郎社長を外し、財界に顔が利く東芝出身の西室泰三氏を社長に据えた。

 民間人による経営を印象つけようとしたが、西室氏は郵政との馴染みは薄く、複雑な組織問題に手を付ける意欲はなかったようだ。

 補佐役として旧郵政官僚のボスだった鈴木を送り込んだのが、官房長官になった菅氏だった。

 鈴木副社長は西室氏と同じ山梨出身という縁で食い込み、懐に飛び込んだ。西室氏はのちに大失敗が明らかになる国際物流事業への進出問題に傾注し、経営の実務一切を鈴木氏が引き受けた。

 菅官房長官が安倍政権で存在感を誇示するようになったのもそのころからだ。

「首相の女房役」の官房長官が、「携帯料金の引き下げ」など独自の政策を掲げ「ポスト安倍」を伺うかのような振る舞いを始めた。

 鈴木氏は、官房長官として政権内や霞が関ににらみを利かすが、政治家として何をしたいのか、いまいちはっきりしないとの声もあった菅氏の政策ブレーンとしても仕え、日本郵政グループの外でも存在感が増すようになった。

 菅長官の威を借りて「郵政のドン」として振る舞う鈴木副社長に、現役の事務次官も逆らえないことを示したのが、「処分案漏洩」の一件だった。

怒った高市総務相、首相に直訴
郵政内も二重権力構造、根ずく

 情報漏洩を知って怒った高市総務相が官邸に駆け込んで、ことは表面化する。

 12月19日の「首相動静」に「午後3時5分から28分まで高市早苗総務相」とある。次官の更迭の報告が話し合われたのだろう。

 翌日、緊急記者会見が開かれ、秘密漏洩の事実と相手が鈴木副社長であることが公表された。「政権内部の暗闘が始まった」と霞ヶ関では語られている。

「高市さんは、2度目の総務大臣への就任。情報通信や放送行政は自分の縄張り、という意識が強い。菅さんが官房長官でありながら、管轄外の通信行政に口出しするのを苦々しく思っていたに違いない。高市氏は安倍首相と近い。菅氏の子分がこんなことをしていますよ、と直訴したのでしょう」。ある現役官僚はこう解説する。