似たような二重の権力構造は日本郵政内部にも根づき、旧郵政官僚による支配の体制ができあがっていた。

 西室氏が東芝の不正会計問題への関与などを疑われ、病気を理由に退任した後、日本郵政社長には、ゆうちょ銀行社長だった長門氏が就いたが、すでに日本郵政は鈴木氏の顔を見て仕事する組織になっていた。

 長門氏は「表の顔」でしかなく、責任はあるが実権はない。責任の軽い副社長が組織を仕切る。

 日本郵便も三井住友銀行から来た横山邦男氏が社長を務めるが、「民営化反対」の牙城・全国郵便局長会(全特)の会長から抜擢された大澤誠副社長が睨みを利かす。会長は旧郵政官僚の高橋亨氏だ。

 かんぽ生命も旧東京海上火災保険からトップが来たが、損保と生保は業務が全然違う。旧郵政官僚の堀金正章副社長が実務を握っている。

 金融機関からやってきて、数年しかたっていないトップが、重層的で独特の職場慣行がまかり通る郵政の現場を理解するのは困難だ。

「現場の情報が上がってこなかった。日本郵便の社長もかんぽ生命の社長も気づいていなかった」と長門氏は、かんぽ保険の不正販売の調査報告書がまとまった際の記者会見で釈明したが、その通りだろう。

 3社長は郵政組織にとって「他所からやってきたお客様」でしかない。責任と実権のねじれは、情報を遮断し、判断を誤らす。

NHKへの「抗議」問題で
ゆがんだ統治が露呈

「今回の郵政不祥事の責任を問うなら、鈴木副社長の責任抜きに語れない」と、事情を知る財務官僚は指摘する。

「表の顔」である3社長は、経営計画を立案、業務の執行状況を確認など会議や決済で忙殺される。現場で起こる違法行為などトラブルは、「募集品質改善委員会」が報告する仕組みになっていた。

 不正行為を「募集品質」と呼ぶ“社風”も異様だが、「募集品質は改善されている」という報告がされていた。

 副社長たちは実情を知っていても、面倒な話は社長の耳には届いていなかった。件数を減らすため報告事項の基準を狭くするなど、問題を隠蔽する方向へと組織は動いた。