旧郵政官僚が実効支配する二重権力の現実が世に知られるようになったのは、「かんぽの不正」が社会問題になる中で、この問題を放映したNHKに対する「抗議」だった。

「(NHKは)まるで暴力団と一緒。殴っておいて、これ以上殴ってほしくないならやめたるわ、俺の言うことを聞けって。バカじゃねぇの」と鈴木副社長は囲み取材の記者たちに語った。

「クローズアップ現代+」は昨年4月、「郵便局が保険を押し売り」という番組を放映。続編を製作するため7月、情報提供を求める動画を流した。

 郵政側は「内容が一方的だ」と 当時の上田良一NHK会長に文書で抗議、動画の削除を要求した。

 NHKが「政策と経営は分離されている。番組政策に会長は関与しない」と応じなかったことに郵政側は反発。「放送法で会長は協会(NHK)を代表し、その業務を総理する、となっている」と、NHK経営委員会(石原進会長)に「ガバナンスの検証」を求めた。

 経営委員会は郵政側の主張を受け入れ、上田会長に「厳重注意」した。会長は放送局長に「詫び状」を持たせ、収拾をはかった。郵政側の意向に沿って動画は削除され、続編は放送されなかった。

 一連の抗議を主導した鈴木副社長は、NHKに宛てた文書で、自分を「かつて放送行政に携わり、協会のガバナンス強化を目的にする放送法改正案の作成責任者であった」と強調するなど威圧的な態度に終始した。

 上司である長門社長が「NHKの報道は正しかった。あの時点でもっと気をつけていれば」と反省の言葉を述べていることなど眼中にない振る舞いに、「社長より偉い副社長」が日本郵政にいることを世間は感じ取った。

民営化から12年たっても
利害もミッションもばらばら

「持ち株会社として日本郵政が果たすべき役割やグループガバナンスのあり方について、全役員のコンセンサスが得られておらず、持ち株会社としてのガバナンスに問題があったと言わざるをえない」

 18日に発表された、保険の不正販売をめぐる調査特別委員会報告書にそう書かれている。

 持ち株会社がグループを統括する、という仕組みが機能していない、というのである。

 だがそれはいまさらの話で、持ち株会社の社長より偉い副社長が、政治とつながって裏で仕切る組織に透明なガバナンスが育つはずもなかったのだ。