実は日本も無関係ではない。8月23日夜、大阪の高島屋大阪店の前で、中国人の若者による香港デモを非難する集会が行われた。集会をとらえた映像には、赤く染められた大きな国旗と「民主とは秩序破壊ではない」とするプラカード、そして声高らかに中国国歌を歌う中国人の若者が映し出された。関西を中心とした中国人勢力に詳しい在住の華人実業家によれば、「背後に中国の在外公館と華人メディアの存在があることは否定できない」という。

 すでに、日本の大学では研究活動や授業にも影響が出ている。

「ウイグル問題や台湾問題を扱う教授については、中国人留学生たちが抗議運動で結束することもあり、授業がやりづらいという嘆きを聞くようになりました。これまで中立的な見方をしていた中国人教授が、香港問題について中国を支持するように立場を翻すなど、教学の場にも大きな影響が出ています」(都内の私大教授)

ビジネスの利益かそれとも正義か

 企業にも影響が出ている。2019年10月24日、ペンス米副大統領が中国に関する政策演説を行ったが、そこで中国マネーに翻弄される米企業の弱腰ぶりを糾弾した。背景には、米プロバスケットボールNBAのヒューストン・ロケッツ幹部が香港民主化デモを支援する内容をツイートしたところ、中国のファンやスポンサー企業から批判が殺到し、ロケッツ幹部が発言の撤回と謝罪に追い込まれた、という経緯がある。

 2019年10月26日の日本経済新聞は、ペンス氏の「NBAは独裁政権の完全支配下にある子会社のようだ」とする批判を取り上げたが、そのような企業は日本にも数多く存在する。記事の末尾は「米国だけでなく、日本など他国の企業にも同じ問いが投げかけられるのは必至だ」と締めくくられたが、商売の利益か、はたまた正義か――という選択は、日本企業にも重くのしかかっている。

 中国政府は以前から、外国人の言論に目を光らせてきた。筆者はかつて中国で日本語情報誌の編集・出版業務に携わっていたが、チベット問題、ウイグル問題、天安門事件などのキーワードや記事はタブー中のタブーとされた。「香港」「台湾」についても「中国香港」「中国台湾」とすべて4文字で表記するよう厳重に指示された。「中国国内で出版を行う以上は、郷に入れば郷に従え」と毎月当局による全ページの検閲を受け入れざるを得なかった。