「善い行いは必ず罰を受ける」という言葉は真実かもしれない。しかし、自らの善行を自ら進んで罰することができるのは、相変わらず活動的なドナルド・トランプ米大統領だけだろう。
ここでの善行とは、イランのガセム・ソレイマニ氏の殺害を命じたことだ。同氏はイラン革命防衛隊の精鋭組織「コッズ部隊」の司令官として、1つの戦略の遂行に年月を費やしてきた。人々を殺害することで1979年のイラン革命を輸出するという戦略だ。犠牲者の中には米国人、イラク人、イラン人、欧州人、シリア人、その他中東全域の人々が含まれている。ソレイマニ氏は自身の乗った車両がドローンによる空爆を受ける前、さらに多くの殺害を計画していた。
ソレイマニ氏殺害後の数日間、トランプ大統領はいい時間を過ごした。空爆に関する声明は率直かつ抑制されていた。批判されても沈黙を保ち、行動で全てを示した。とはいえ、これは国益に絡む大統領の重大な決断だった。全国の支持者らは当然、次に何が起きるのかと待ち構えていた。次に起きたことは、なじみ深いものだった。批判勢力に対するトランプ流の反撃だ。矛先はイラク国内に向けられた。
トランプ氏は5日、評論家や民主党議員がソーシャルメディアやモーニングショーで騒ぎ立てる中でも冷静さを保っていたが、イラク議会でのおおむね象徴的な投票結果を甘受することはできなかったようだ。スンニ派とクルド人の議員の大半が欠席する中での決議は、米軍をイラクから追放するという内容だった。トランプ氏は同日、大統領専用機の機内で「非常に大きな制裁をイラクに科す」と警告した。イランの「文化的施設」を爆撃するというもう1つの警告は、すぐさまジュネーブ条約をめぐる論争に発展し、一部の共和党議員はこの発言と距離を置く姿勢を示した。
われわれは、ソレイマニ氏に対する空爆は正当なものだったと考えている。マイク・ポンペオ国務長官が5日午前にテレビで説明したようにだ。ただ、この国が大統領選挙に向かいつつあるという現実も同時に進行している。民主党側は大統領選で勝つため、何としてもトランプ氏と個人的に戦える状況を作り出す必要がある。マイケル・ブルームバーグ氏の広告キャンペーンは明らかにそれを狙っている。
大統領がイランとイラクの人々に対するツイートや言葉での攻撃以外に何の行動も取らず、ソレイマニ氏殺害の決断が1回限りの出来事のように見えてしまえば、敵にチャンスを与えることになるだろう。