ゴーン逃亡劇で見えた
法務省の対応の呆れるほどの緩さ

 最もひどかったのは法務省です。ゴーン被告の会見直後に、夜中にもかかわらず法務大臣が会見してコメントを発表した迅速性は評価できるものの、法務省の対応には2つの大きな問題点があると思います。

 第一はコメントの内容です。ゴーン被告は長期の拘留、弁護士が同席しない取り調べ、長期間にわたる裁判など、日本の司法制度の問題点を具体的に指摘して批判しているにもかかわらず、法務大臣の反論は「我が国の刑事司法制度は……適正な手続きを定めて適正に運用されている」などと、国会答弁に近い抽象的な物言いに終始していることです(http://www.moj.go.jp/kokusai/kokusai04_00001.html)。これでは、日本の事情に明るくない海外メディアに対しては説得力がありません。

 第二は、コメントの発信の仕方です。法務省は、記者会見で大臣コメントを発表した以外は、法務省のHP上に3カ国語でコメント掲載しただけでした。しかし、ゴーン被告との駆け引きの主戦場が海外メディアであることを考えると、それだけで法務省の見解が世界に広がるはずありません。

 海外のマスメディアに法務省の主張をしっかりと書いてもらおうと思ったら、記者クラブ相手の会見だけでなく、味方になってくれそうな海外メディアの記者に対して個別に丁寧な説明(記者レク)をすることが不可欠です。

 かつ、ネット戦略という観点からも、ネット上に星の数ほどウェブサイトが存在する中で、単に法務省のHPにコメントを掲載するだけでは、世界の誰も見てくれません。ソーシャルメディアなどを駆使して、海外のマスメディアに直接情報を提供したり、海外のメディア関係者が多く関わるネット上の場を探してそこに積極的に情報を発信してコミュニケーションするなど、ネット上での能動的なアクションことが不可欠だったはずです。

 これら2つのコミュニケーション戦略として当たり前のことを迅速にやるべきだったのに、それが行われなかったからこそ、ゴーン被告の会見を受けて日本の司法制度の問題を報道する海外メディアで、法務省のスタンスを報道したところはほぼ皆無だったのです。