しかし私が知る限り、逮捕された秋元司議員はIR関連で影響力のある自民党議員には含まれていません。また、問題の中国企業500.comがカネを渡したと報道されている5人の自民党議員のうち、IR関連である程度影響力があったと目されるのは1人だけです。

 加えていえば、この500.comから秋元議員に渡ったカネは合計700万円くらいになるようですが、IR絡みで動いているカネの相場と比べると、情けないくらいに少ない金額です。実際、IRの運営を狙う大手の外資系企業は、すでに500.comより圧倒的に多額の資金を日本に投入しているといわれています。

 ただ、それらの外資系企業は当然日本の法律も熟知しているので、それらのカネは地域でのIRに対する理解の促進など、非常に正しい使われ方をしています。つまり、今回のIRを巡る騒ぎは、IR関連で影響力のない下っ端議員と、IR関連での実績も経験もない中国の新参企業が、はした金のレベルで愚かなことをやったに過ぎないというのが、実情ではないかと思います。

 そうした、IRに関して多少知識がある人ならば誰でもわかるような構図をちゃんと説明しないで、“IR疑獄”という誇張された表現を使って大げさに報道するだけでは、国民の側に正しい構図がまったく伝わらないのです。政権絡みのことなら何でも批判したいという一部メディアの気持ちもわからないではないですが、国民に正しい情報を提供するというマスメディアの役割の観点から考えると、やはりちょっと緩みすぎではないでしょうか。

今の日本に緩んでいる
余裕などないのでは?

 それでは、なぜマスメディアを筆頭に政府も民間もこんなに緩んでしまったのでしょうか。

 政治と経済が比較的長期間安定しているので、皆が油断してしまっているのかもしれません。もうすぐ東京オリンピックなので、つい気分が浮かれてしまっているのかもしれません。何が本当の原因かはわかりませんが、少なくとも間違いなくいえるのは、「みんな。もうちょっとしっかりしてくれ」ということです。

 この緩みようを見ていると、東京オリンピックで盛り上がるのはいいですが、実は今年は日本にとって「しんどい年」になるのではないかと、懸念せざるを得ません。

(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授 岸 博幸)