だから努めて、そういう雰囲気にならないようにしていたのだが、ある日ついに、一線を越えてしまった。そして感動した。人生で一番「感じてしまった」からだ。尿も漏れなかった。だから、最初は「一回だけ」のつもりでいたのに、頻繁に会わないではいられなくなった。

 そして、1カ月が過ぎた頃、多香子さんは気が付いた。尿漏れがほぼ治っている。ランニングを終えて帰宅しても、尿漏れパットはつけたばかりの軽さを維持していた。以前は、たっぷりと尿を吸って重たくなっていたのに…。

尿漏れ予防には
膣トレとリラックスが重要

 尿漏れは、女性の3人に1人は一生のうちのどこかで経験するといわれている。「切迫性尿失禁」「腹圧性尿失禁」「混合性尿失禁」の3タイプがあるが、多香子さんの場合は「腹圧性尿失禁」だった。咳やくしゃみをしたり重いものを持ち上げたりなど、お腹に力が入った時に尿がもれてしまうタイプで、どの年代にも起こりうる。加齢や出産を契機に経験することが多いのが特徴で、もっともポピュラーな尿漏れだ。

 多香子さんが、出産を機に尿漏れするようになったのは、尿道のバックサポートとして働き、腹圧がかかっても尿が漏れないように支えてくれる「膣」の筋膜や肛門挙筋が出産で損傷され、ゆるんでしまったことと、出産・育児・夫婦関係のストレスによるホルモンバランスの乱れが原因と考えられる。

 尿漏れに及ぼす膣のゆるみの影響は大きく、フランスでは産後、産婦人科医が「膣トレ(膣の筋力トレーニング)」の処方箋を出し、ほぼ100%が膣トレをするという(『フランス式 1分膣トレ』学研プラス刊による)。産後に限らず、医師の処方箋があれば、国民健康保険で受けられる。膣トレは、尿漏れ、女性ホルモン力アップ、性交時の濡れにくさや痛み、精神的な落ち込み等々、女性のあらゆる不調の改善に役立つらしい。

 ただし、若い恋人との性交で多香子さんの尿漏れが改善したのは、性交が「膣トレ」効果をもたらしたというよりは、女性としての自信を取り戻し、かつオーガズムを得たことで、心身ともにリラックスし、自律神経のバランスが整い、連動して女性ホルモンのバランスも整って、膣や尿道の機能が改善されたからだろう。

 日本でも近頃は、産後の膣トレを指導してくれる産婦人科が増えているが、まだまだ数は少なく、出産を機に、尿漏れや性交痛に悩まされるようになり、誰にも相談できずに耐えている女性は多いのではないだろうか。

 医師や臨床心理士らで組織される日本性科学会が、2000年と12年に実施した「中高年のセクシュアリティ調査」によると、40~70代の全ての世代で、男女ともにセックスレスの割合が増加しているのだが、興味深いのは、セックスレスの原因として、「相手(妻)の欲求が自分より乏しすぎる」と回答している男性が多い点が興味深い。