マラソン人気は日本とアフリカだけ?
禁止で五輪種目から外れる可能性も

 ある陸連関係者から、「マラソンは五輪種目から外れる可能性がある」と聞かされたのはつい最近のことだ。札幌のコース決定においても組織委員会と揉めたが、これはIOC(国際オリンピック委員会)のマラソンに対する考え方と日本の組織委員会の思い入れの違いも背景にあった。

 全競技でダウンサイジング化を図るIOCにとって、42.195キロもの長距離を前提とするマラソンは、なかなか厄介な種目なのかもしれない。例えば6キロ7周の周回コースなら、コース設営も警備もずいぶん楽になる。しかも「マラソン中継をずっとテレビにかじりついて見るのは日本人くらい」といわれるように、マラソンは見るスポーツとして世界的に人気が高いわけではない。

 さらに、マラソン世界ランキングを見れば驚愕する。いまや男子の世界ランキングの100位以内は、ほとんどケニアやエチオピアの選手ばかりで占められている。日本新記録で1億円獲得した大迫傑の2時間5分50秒は、世界ランキングでは97位。ぎりぎり100位以内に入っているレベルだ。

 詳しく書けば、上位100位までの50人がケニア選手、40人がエチオピア選手の記録だ。他は辛うじてモロッコ3人、トルコ、バーレーン、イギリス、ウガンダ、アメリカノルウェー、日本が1人ずつ。上位60位までの記録の58までがケニアとエチオピアで占められている。こんな競技が他にあるだろうか?

 野球が、世界的な普及が十分でないとの理由で、東京大会を最後に種目から外れると決まっている。マラソンはそれ以上の偏りなのだ。このデータを見れば、マラソンが五輪種目から外れることは何ら不思議ではない。

 話を聞いたその陸連関係者によれば、古代オリンピアの史実に基づく種目だけにマラソンは継続するかもしれないが、代わりに1万メートルが姿を消す可能性が指摘されているという。
 
 そのような状況の中で、もし「厚底シューズを禁止する」決定がなされたならば、それは世界陸連がマラソンとの決別を自ら選択し、宣言するのと同じだろう。そこまで重大な変化を覚悟して厚底禁止に踏み切るとは思えない。もし禁止したら、オリンピックを含めた世界陸連公認大会からマラソンが離脱することを意味するのだから。

(作家・スポーツライター 小林信也)