箱根駅伝20202020年の箱根駅伝では、多くの選手がピンク色の『厚底シューズ』を履いていました Photo:JIJI

青山学院でさえナイキを履く
「厚底シューズ」が主役の箱根駅伝

 箱根駅伝は青山学院が2年ぶりの優勝を飾った。

 初日の往路が始まった直後から、箱根駅伝を伝えるネット記事の主役は大半が『ナイキの厚底シューズ』だった。パッと見たところ、ごく一部を除いてほぼ全ランナーがナイキの厚底シューズを履いている。昨年のマラソングランドチャンピオンシップ(MGC、東京五輪2020マラソン代表選考会)で旋風を巻き起こしたピンクに代わるオレンジとライトグリーンのニュー・モデル(ヴェイパーフライ ネクスト%)が嫌でも目立つ。騒ぎになるのも仕方がない。

 アディダスと使用契約を交わしているはずの青山学院でさえ、全員がナイキを履いて走った。これでは、「アディダスだから去年は勝てませんでした」「今年はナイキで勝てました」というメッセージが伝わってしまう。それをやむなしとするくらい、監督、指導者、メーカー関係者たちの間でも『ナイキの厚底シューズ』の優位性はこの1年の間に認められ、浸透した。

 青山学院は、10月の出雲駅伝で5位、11月の全日本大学駅伝では終盤に東海大の逆転を許し2位に甘んじた。この時まで、彼らの足下はアディダスだった。それだけに、箱根に登場した選手全員がナイキの厚底だったことは衝撃的だった。

 原晋監督はレース後、シューズについて訊かれて「ノーコメントということにさせてください」とすり抜けた。シューズは各選手の選択に任されているといわれるが、よほどの差がない限り、契約のあるアディダスを使う選択が優先されるところだ。つまり、それほどの差がある、という意味だろう。

 表彰式に臨む青山学院の選手たちは全員がアディダスのシューズに履き替えていた。ここにも、学生スポーツでありながら巨大なスポーツビジネスの一端を担う箱根駅伝の現実が浮かび上がって見える。学生ではあるが、広告塔であることを自他共に認識している。それが箱根駅伝だ。

『2020年の日本』が見える
箱根駅伝報道の一極集中

 果たして区間新連発の要因は、本当に厚底シューズか?

 往路は第2区から第5区まで区間新が出た。往路優勝の青山学院から4位東海大まで従来の往路最高タイムを更新。復路でも6区、7区まで区間新が続いた。さらに10区では2選手が区間新。高速レースになった要因が『厚底シューズ』といわれるのも無理はない。だが、こうした世論の形成や報道傾向にも、『2020年の日本』が浮かび上がって見える。