キッチン大手クリナップは7月27日、大阪・梅田にショールームをオープンした。そのハレの日に時折厳しい表情を浮かべる井上強一社長。胸の内にあるのは「大震災を経て西日本に生産をシフトするのに、関西での販売力が弱い」という危機感だ。新ショールームは社運を懸けた大勝負だった。

従来の商品機能説明や価格表示はせず、オシャレな作りにこだわった

 駅直結のビルにあるショールームは「オシャレな若いママ向け」「料理好きな50代男性向け」など6つのキッチン事例を紹介。トータルコーディネートを数多く提案するのは他社にない試みだ。高橋健人所長は「従来のショールームは工務店に紹介された購入検討客を囲い込む場だったが、誰でも気軽に立ち寄れる場にして潜在需要を掘り起こす」と意気込む。

 東日本大震災前までは生産の8割は福島県いわき市に集中しており、震災後は数カ月間、操業停止を余儀なくされた。残り2割を担う岡山工場も、いわきのみで作っていた部品が調達できずに出荷が滞った。この反省から岡山を全体の4割を担う規模まで増強中だ。

 同時に営業戦略も変わった。キッチンは輸送コストが高いため、生産拠点に近いエリアで多く売りさばくことが重要。東日本中心の商売からの転換が必須となった。

 業界を見渡すと、建材・住宅設備機器メーカーは再編が進み、LIXILは売上高1兆円の総合グループに化けた。対してクリナップはキッチン専業を貫き、売上高1000億円強。販売シェアこそ17%強で大手に引けを取らないが、このままではのみ込まれかねない。「目指すはシェア25%。できなければわれわれの存在意義はない」と言い切る井上社長。関西でのシェア拡大に生き残りを懸ける。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 柳澤里佳)

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