湖北省武漢市から広がったとされる新型コロナウイルスが中国全土を襲い、世界を震撼させている。筆者が本稿を執筆している1月27日午後4時時点(北京時間)で、中国全土でウイルスに感染した肺炎患者の数は2823に上り、81人が死亡している。
中国の地図を広げてみると、湖北省の省都(日本の県庁所在地に相当)武漢市が中国のちょうどど真ん中に位置することが分かる。交通の要塞であり、しかも例年延べ30億人が大移動する春節(旧正月)の時期に感染症が発生してしまった。患者はすでに中国全土に広がっており、湖北省で1423例と突出して多いが、大都市で言えば、広東省で146例、北京市で68例、上海市で53例と広がり、筆者が現在拠点とする香港でも8例、日本でも4例が記録されている。
SARS以来、過去17年間で
最大の感染病危機
湖北省の幹部は、この事態を重く受け止めているようだ。
1月26日夜、湖北省長王暁東と武漢市長周先旺が武漢市内で記者会見を開いた。
「新型コロナウイルス肺炎疫情が発生して以来、党中央と全国人民に心配をかけている。私は非常に心が痛いし、うしろめたい。自責の念にかられている」
王はこう言った。腐敗で落馬し、法的に処罰される際の裁判所で口にするならともかく、湖北省のナンバー2という高級官僚が公にこのような発言をすることは異例中の異例と言える。それだけ今回の問題が深刻かつ重大であるということ、そして党中央が一地方である武漢市から全国、世界にまで蔓延している感染症を高度に、かつ政治的に重視、懸念していることを物語っている。