ママや常連客と酒を飲みながら雑談やカラオケを楽しむ「スナック」。ネオン看板が立ち並ぶ光景は昭和の風物詩だったが、令和の今、特に女子の間で再びスナックが人気だという。スナックビジネスの意外なニーズについて、“スナック女子”として約400店舗の扉を開けてきた五十嵐真由子氏に聞いた。(清談社 岡田光雄)
実はコンビニより多い!?
減少傾向を経て人気が復調
「え、何でこんな辺ぴな所にスナックがポツンと一軒だけあるの?」
一昔前までは住宅街や街灯もないような山のふもとなど、どこにでもスナックがあった。五十嵐氏は、「スナックだけに限定した数字は見当たらないが、政府統計の経済センサス-基礎調査(バー、キャバレー、ナイトクラブなどを含む従業員数1~4人規模の店舗)によれば、2009年時に約10万軒あった」という。これは現在のコンビニの数(5万5688店)よりも多い数字だ。
スナックといっても、おそらく読者によって定義もバラバラだろう。ママが1人でやっている場合もあれば、複数人の女性キャストが在籍していたり、男性マスターがやっていたり、カラオケの有無に限らず、スナックと名乗っている店はごまんとある。
「確かにスナックの定義は曖昧です。強いて説明するなら、『雑談や飲食などを楽しめる環境を、カウンターの中にいるママ(あるいは男性マスター)が提供し、そこに同じモチベーションを持ったお客たちが集まる空間』といったところでしょうか。よくキャバクラなどと比較されることもありますが、スナック(深夜0時で閉店)は飲食店なので風営法の許可が必要ありません」
15年以降、スナックの店舗数は減少傾向にあったが、最近は再び盛況の兆しがあるという。
「ここ4~5年ぐらいでスナックの数はかなり減少している印象です。理由は再開発の影響、ママの高齢化や担い手不足によって、店を閉めるところが増えたからだと思います。昭和20~30年頃のスナック開業ラッシュのときにオープンしたようなお店のママは、今はもう80~90歳ですからね。一方で、東京など局所的には、女性客を中心に再び盛況を取り戻しつつあるようです」
その主な理由を五十嵐氏は2つ挙げる。まずは、16年頃から「Hanako」(マガジンハウス)、「OZ magazine」(スターツ出版)などの女性誌がスナック特集を大々的に組み始めたこと。次に、会社内で社員同士のコミュニケーションが減少する時代となり、30~40代の女性が気軽に飲みに行けるサードプレイス的なコミュニティーの場を求めたことだ。