一方で、全国紙デスクは疑問も口にした。

「青森の事件は無分別に金をばらまいていたからスッカラカンになりましたが、田村被告は自分のために使っていたようだ。少なくともばらまいてはいない」

 いくら馬に年間数千万円かかり、高級外車の購入などで散財したとしても、5~6年で10億円は使えないのではないかというのだ。

 確かに、「馬主」「高級外車」とはた目には羽振り良く見えるが、周囲に不審さを感じさせるほどの贅沢(ぜいたく)三昧の生活をしていたような話は聞こえてこない。どこかに隠しているという可能性もゼロではないかもしれない。

組合員の憎悪を浴びるのは誰か

 それでは、田村被告はどれぐらいの罪に問われるのだろうか。起訴された業務上横領罪は刑法253条で、法定刑は「10年以下の懲役」である。

 もし最高の10年を求刑されても、一般的に「7割司法」「7掛け判決」といわれるように、おおざっぱに言えば懲役6~8年の幅に収まるだろう。

 罪を重ねたとされる6年間で10億円を使い込み、弁済能力がないから「すみません」で済まされる。

 田村被告は入社とほぼ同時に労組へ出向となり、その間、年金は納めていたはずだ。出所後は自己破産すれば、悠悠自適の年金生活が待っている。

 その年金を使い込まれた組合員約7000人の憎悪を一身に浴びているはずだが、そんなことを意に介するようなら、最初からそんな犯行に手を染めてはいまい。

 その憎悪は青森の事件と同様、杜撰な管理体制で巨額横領事件を許し、発覚を遅らせた労組幹部に向けられるのは間違いない。