高口康太
#15
かつて「日系の牙城」と呼ばれた東南アジアの自動車市場で、勢力図が静かに塗り替えられつつある。タイでは日系メーカーのシェアが低下し、中国のBYDなどが侵食し始めている。背後には、単なる安さや航続距離の競争を超えた新潮流――EVと自動運転の融合がある。その中核を握るのは意外にも、スマートフォンで知られる通信機器大手の中国ファーウェイだ。わずか5年で中国自動車メーカーの“頭脳”を支える存在となり、車載OSから半導体までを一手に供給する。その姿は、かつてパソコン市場を支配した「ウィンテル」を想起させる。東南アジアを足掛かりに、中国発の新たな標準が広がれば、日系を含む外資勢の優位は崩れかねない。その最前線で何が起きているのかを探った。

#13
中国は2024年の新車販売台数が3100万台に達し、14年連続で世界最大の自動車市場の地位を維持した。そのうち電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車を含む新エネルギー車の販売は約1300万台に上り、全体の40%を占めた。中国は、EV市場での圧倒的な存在感に加え、自動運転分野でも急速に進化を遂げている。特に注目されるのが、自動運転ソフトウエアを開発し自動車メーカーに販売するモメンタと、AI(人工知能)チップ開発を主力とするホライゾン・ロボティクスだ。両社の技術はすでにトヨタ自動車、独メルセデス・ベンツ、独フォルクスワーゲンといった大手自動車メーカーが、中国市場向けのモデルに採用し始めており、中国製の自動運転ソリューションが現地市場で“標準装備”となりつつある。こうした技術は高級車に限らず、大衆向けEVにも搭載されることで、広範な普及とグローバル展開が進む。かつて米シリコンバレーが主導していた自動運転の競争軸は今、中国勢によって塗り替えられようとしている。気付けば、中国発のスタンダードが世界を席巻しつつあるのだ。本稿では、世界の最先端を走る中国の自動運転の技術やビジネスの最新事情を明らかにする。

#5
中国発の新型AI(人工知能)、ディープシークは世界に大きな衝撃を与えた、という話はすでに日本メディアで繰り返されているが、見過ごされている本当の衝撃が始まろうとしている。ディープシークは中国AIの到達点ではなく、ここから急激な成長が始まろうとしているのだ。

中国人留学生がコロナ後に爆増しそうな理由、日本の大学は「安くてお得」
日本は家計に占める教育支出の負担が、先進国でも高いことが明らかになっている。ところがこの日本の教育を「安くてコスパがいい」と思っているのが、中国人である。日本人にとっては高い大学教育に群がる、中国人留学生の動向をお伝えする。

#19
「ITゼネコン」とやゆされ、ピラミッド型の下請け構造を抱える日本のソフトウエア開発業界。このピラミッドの下層は、中国の低コストな開発会社が支えていた。それが近年、日本の安さに嫌気が差して逃げ出しているという。NTTデータやNECといった発注側の企業が震撼せざるを得ない、開発現場の「安いニッポン」現象を追った。

#11
休暇を利用して家族や仲間と、あるいは一人で温泉地を訪れるという人は多いだろう。健やかで癒やしに満ちた温泉は、日本が誇る文化と言ってよい。この温泉に今、猛烈な勢いで海外の買いが入っている。

デンソー超えの自動車部品メガサプライヤーになる。中国通信機器・端末大手ファーウェイのEV戦略が明らかとなった。価格破壊の新型センサーから自動運転ソフトウエア、電力管理システムまで、その実力に迫る。

中国のIT大手、テンセントが楽天グループに出資した。楽天はこの出資を株価上昇や配当を目的とする「純投資」とするが、どうもそれにとどまらなさそうだ。楽天こそがテンセントにとって「必要なパーツ」なのである。

日本の国会に相当する中国の全国人民代表大会が開催された。公表された主要経済目標からはコロナ禍前への回帰が強調されているが、注意深く観察すると、不安要因が見え隠れする。

人気急上昇中の音声SNS、クラブハウス。従業員10人あまりの小さな企業が世界的サービスを運用している陰には、知られざる中国企業アゴラの姿があった。日本企業の導入も進むアゴラの実力とは?課題のセキュリティー不安とは?

世界各国がコロナ禍にもだえ苦しむ中、中国は主要国としては唯一、力強い経済回復を見せている。だがそんな中国経済にも「隠れた傷」があるという。不動産市場の「K字型回復」がそれだ。

#54
アリババグループやテンセントなど、世界的な大企業ですら安泰ではない。血で血を洗う抗争が続く中国IT業界。テンセントのポニー・マーCEOはさらに混迷深める「大淘汰」の時代になると予言している。

#5
中国最強のフィンテック企業であるアント・グループは、さまざまな先進的サービスを生み出している。1億人が加入する新型保険、人工衛星による農村金融の実力など、世界をリードする技術を追う。

#4
スマホ決済アプリ「アリペイ」は新型コロナウイルス対策にも絶大な力を発揮した。スムーズな配布、そしてスピーディな政策評価が実施された電子消費券、感染リスクを評価する健康QRコードとは。知られざる中国のデジタル・コロナ対策を追う。

#3
アマゾン、eBayという米国の巨大IT企業を、中国市場で倒したアリババ。勝利の鍵を握ったのは、アリペイによる「信用」を担保する技術だった。混沌の中国で「信用」を築くためにアリペイは何を行ったのか?

#2
世界最強のフィンテック企業アント・グループの実力とは。年間1800兆円もの送金・決済が行われる怪物アプリ「アリペイ」を支えるのは、独自開発によって生み出された先進的システムだった。

#1
スマホ決済アプリ「アリペイ」で知られる金融ベンチャー、アント・グループのIPOが延期。その背景には何があったのか?引き金となったのはジャック・マー氏の“失言”だが、その背後には金融当局との長年の対立があった。

予告編
アリペイ「幻の30兆円上場」で判明、中国当局vsイノベーションは大転換期
急転直下の延期が決まった、アリババグループの金融企業アント・グループの上場。その背景にはイノベーションと規制を巡る長年の対立があった。自由を謳歌してきたチャイナイノベーションは今、岐路に立たされている。

中国最大のネットセールである「独身の日」が開催された。中国EC最大手アリババグループの流通額は7兆円を超えるなど華やかな数字が躍ったが、その裏では日本企業を含むメーカーの過酷な投資ゲームが繰り広げられている。

世界最大の資金調達が予定されていたアント・グループのIPOが延期された。背景にあるのは金融当局との暗闘だ。ハイリスクの消費者金融だとの懸念が強まっている。
