今回は、ニュースやビジネスパーソン間でよく耳にする経済&金融系の用語をいくつか紹介しましょう。単語の氏素性を深掘りすれば、面白いだけでなく、意味がより理解しやすくなるはずです。(ポリグロット外国語研究所代表 猪浦道夫)
CapitalとCapには
密接な関係が
●GDP(Gross Domestic Product)
いわずと知れた「国内総生産」のことですが、経済的定義は他の記述を参考にしていただくとして、英単語を解析していきましょう。
gross は「総体の、全部の」の意味ですが、もとはラテン語のgrossus(厚い、粗末な)という形容詞で、商業の世界では「12ダース」も意味します。みなさんも「これはグロスで…」とか言うのを聞いたことがあるでしょう。
domesticは「国内の」の意味で、空港に行くと「国内便」のゾーンはdomesticという看板があるはずです。語源はラテン語のdomus(家)の形容詞形に由来しますが、dom-は「家」→「家長」からdome、dominate、domain、domesticateなど「支配」のイメージをもつ単語を多く派生させています。日本語のはやり言葉では「ウチの会話は超ドメだから」などと若者が使っているのを聞きますね。
productは「プロダクト」で、もうすっかり日本語化されていますが、単語のつくりはpro-(前方に)-duce(引き出す)から「生み出す、生産する」の意味の動詞produceができ、その過去分詞形(したがって「生産されたもの→製品、生産物」)がproductというわけです。
●Capital gain
capital gainとは、資産売却益とか株式譲渡益のことで、専門的には資本利得などと訳されます。でも、多くの人は capital と聞いたら「資本」の意味を思いだすのではないでしょうか。この言葉はラテン語capus(頭)にさかのぼります。
もうお分かりかもしれませんが、日本語の「頭金」の発想と同じで「最初のお金」ということから「資本」の意味が、「頭=主位にくる町」から「首都」の意味が出てきたのです。capitalに「~化する」の語尾 -ize(-ise) がついたのがcapitalize(資本化する、投資する)です。
cap(帽子)がこのcapitalに関係があるのでは?と思われた方はその通りです。これは古い時代にフランス語を経由して英語に入った形です。
入れ物の蓋のことも「キャップ」といいますが、同じ単語です。団体のボスという意味ではcaptainもそうです。「キャプテン」というと、野球部のキャプテン(主将)、飛行機の機長、船の船長などを思い出しますね。