内閣府のエネルギー・環境会議(以下、エネ・環会議)が、「エネルギー・環境に関する選択肢」を公表し、将来の原発比率をどうするかに関して、国民的議論に入っている。私は総合資源エネルギー調査会基本問題委員会の委員として、今回の選択肢策定の議論に参加した。その経験を踏まえて、いわゆる3つの選択肢が何を意味しているのかを論じたい。最初に、誰が我が国の原子力政策ならびに電力政策を決めてきたのかをおさらいしてみよう。
原子力政策、電力政策は
だれが決めているのか
原子力政策ならびに電力政策は、従来から官僚が産業界とすり合わせて決めてきたと言っても過言ではない。具体的には審議会に諮問し、答申を大臣が決定する形で政策となる。その審議会の人選は官僚が結論を予測しながら進めるが、ほとんどが利害関係者で占められていた。一人か二人の消費者団体の代表が入るものの、国民不在の政策決定が行われてきた。
この構造は2001年の省庁再編後も基本的には変更されていない。ただ、原子力委員会(内閣府)の存在が薄らぎ、経済産業省(以下、経産省)の決定内容が力を持つようになってきた。具体例が2005年10月に閣議決定された「原子力政策大綱」と(英語表記Framework for Nuclear Energy Policy)その翌年6月に経産省が決定した「原子力立国計画」である。
原子力政策大綱は以前の「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」からの改名だ。政府の具体的な計画でなく、「基本的な政策の方向を示す役割」になった点が原子力委員会の影の薄さを示している。原子力立国計画では、名目上は大綱の目標を実現するための政策と位置付けているが、中身は、いっそう強く原子力の推進を書き込んだ。
この「原子力立国計画」が原子力政策のベースとなり、経産省が「エネルギー基本計画」を2010年6月に決定した。同基本計画はエネルギー政策基本法に基づいて政府によって決定され、少なくとも3年毎に見直され、また、政府は施策の概況に関して毎年国会に報告する。