官民一体となって電力消費量削減に取り組んだ昨夏に続き、この夏の電力需給にも不安が残る。さらに発電コストの上昇に伴って、東京電力管内では電気料金の大幅な値上げが実施された。他の地域でも料金値上げは避けられない見通しだ。いま一度、自らの電気の利用実態を正確に把握し、効率的な節電施策を実行しよう。

村井哲之(むらい・てつゆき)/環境プランナー 環境経営戦略総研 代表取締役社長。1957年、山口県生まれ。広島大学卒業後、リクルートなどを経て現職。環境経営の専門知識を生かし、多くの団体や企業での講演、テレビ・新聞・雑誌でエネルギーコスト対策や節電アドバイスなどを行う。主な著書に『コピー用紙の裏は使うな!』『節電の達人』など。

 昨夏の節電への対応には、頭を悩ませた経営者が多かったのではないだろうか。

 東京電力、東北電力管内を中心に進められた電力消費抑制の取り組みの目的は、13時から16時の真夏の電力需要ピークを分散させることにあった。産業界では休日を土日から平日にシフトしたり、操業時間をずらすなどの対策が取られ、店舗や家庭でもあの手この手の節電対策が実践されたことは記憶に新しい。

 この結果、当初懸念されていた大規模停電などの事態は起こらず、東京電力管内の企業のピーク時電力消費量は前年比で2割程度減少したとされる。家庭でも15%程度、使用量が抑えられた。8月から10月にかけて、電気料金の請求書を見て「ずいぶん安くなった」と実感した人が多かったことだろう。

 ところが、11月以降、原油等の価格上昇に伴って全国の電力会社は燃料費調整額を上乗せした。このため、12月の電気料金の請求金額は前年比で数%程度しか下がっていないケースが多くなった。「何かの間違いじゃないか」と思った人も少なくなかったようだ。

 関西電力管内では、冬季に前年比10%の電力消費削減が求められた。ところが燃料費調整額の上乗せは約10%にもなっている。これでは電力消費量を削減しても、コスト面のメリットは見込めない。今年度に入って燃料費調整額はさらに上昇することが予想される上に、電気料金の値上げも進みそうだ。現に東京電力では、事業者に対して、電気料金の平均17%アップを発表・実行している。発電コストが比較的低いとされる原子力発電所の稼働が難しい今、今後の電気代は相当上昇すると考えなければならない。特に、容易には価格転嫁できない中小企業にとっては、大変な問題だ。