高値での買い取りが決まったことで、建設ラッシュが起きている
Photo:PANA=朝日航洋

 太陽光発電や風力発電などの自然エネルギーの全量買い取り制度がスタートして1カ月。メーカーが自社工場の屋根にソーラーパネルを設置したり、自治体が遊休地を提供したりするなど、企業が発電事業に参入する動きが次々と出ている。

 そうした中、本来は発電施設などの建設を請け負う立場だったはずのゼネコンも、商機を嗅ぎつけて運営する側に回る動きが出始めている。

 その理由は、収益性の高さにある。太陽光発電の場合、1キロワット当たり42円で買い取ることが決められている。火力のおよそ4倍の高値だ。買い取り期間は20年。関連業界の要望を反映させた価格と期間になっており、自然エネルギーを普及させるための大盤振る舞いといえる。

 最も力を入れているのは大林組だ。7月10日に、100%出資の子会社「大林クリーンエナジー」を設立。すでに京都府など全国5カ所で発電所計画が立ち上がっており、今後も北海道などで発電所の建設を計画中だ。

 大林組は、今年3月に発表した中期経営計画で、本業に加えて自然エネルギーを新たな収益源と位置付けているほどだ。

 また、鹿児島県で京セラなどが計画するメガソーラープロジェクトに竹中工務店が出資するほか、前田建設工業も洋上風力発電への参入を検討するなど、ゼネコンによる自然エネルギーへの参入は今後も続々と増えそうだ。

 公共事業の激減や過当競争などが理由で、建設業は大手から中小まで苦戦が続いている。これまでも、地方の建設会社は農業や介護など、さまざまな異業種に参入し、糊口を凌いできた。

 売上高1兆円を超えるスーパーゼネコンでさえ、営業利益はわずか300億円程度。請負産業をもじって「うけまけ産業だから」という自虐的発言も飛び交うほど、利益率の低さに悩んできた。そうしたゼネコン業界にとって、自然エネルギー事業は、請負から脱却するチャンスと映っているのかもしれない。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 津本朋子)

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