「大規模な風力発電施設の建設は夢に終わるのか」。風力発電業界関係者のあいだで頭痛の種になっているのが、今年10月から始まる環境影響評価だ。
これは建設前に騒音や生態系などへの影響を調べるもので、導入には不可欠な作業だ。しかし、10月から始まる体制での調査は、2~4年もかかると見られており、「あまりに長すぎる」と不評を買っているのだ。
基本的には、風力発電施設の発電能力が10メガワット(MW)以上の場合は国、7.5MW以上は地方公共団体にそれぞれ環境影響評価を受ける必要がある。そのため、素早く風車を建設するには、7.5MW未満の風力発電施設にせざるをえない。
しかし、風力発電の魅力は大規模発電にこそある。メンテナンス部隊を用意したり送電網を引っ張ってきたりと、規模の大小に関わらず必要なコストが多いため、規模の経済が働きやすいのだ。だからこそ、欧米では風車が何十本も並ぶ、数百MWクラスの風力発電施設の建設準備が相次いでいる。
現在、主流となっているのは、発電能力2~3MW強の風車なので、発電施設全体で7.5MW未満に抑えようとすると、風車が数本立つだけになる。
発電の非効率は、発電事業者の収益性が下がるという問題だけに留まらない。中長期的には電力料金というかたちで、電力利用者の懐にも跳ね返ってくることになるからだ。
「今の日本の風力マーケットには魅力がない」。そう指摘する関係者が多い一方で、そのポテンシャルに懸ける動きもある。
風車メーカーの動きを見ると、ある外資系風車メーカーは、「台風対策などを講じた、日本市場用の風車を開発中だ」と明かす。また、独シーメンスは日本での風車受注活動を休止していたが、去年10月に日本の風力市場への再参入を表明した。