新型コロナウイルス(2019-nCoV)による新型肺炎の話題に隠れてしまったが、昨日の2月4日は「風疹(しん)の日」。2020年2月3日現在、新型肺炎のウイルス(2019-nCoV)の基本再生産数──1人の患者から何人に感染させるかという「移りやすさ」の指標は1.4~2.5で、ほぼ季節性インフルエンザ並み。抗ウイルス薬候補が見つかったこともあり、今後、冷静に対応することで少なくとも日本国内では鎮静化へ向かうと思われる。一方、風疹は1人の患者から5~7人に移す強い感染力を持ち、影響も大きい。本来ならもっと警戒されていいはずの感染症だ。新型肺炎のような新しい感染症だけでなく、古い感染症に対する警戒や関心も高めるべきだ。(医学ライター 井手ゆきえ)
風疹の流行を懸念
米国が日本への渡航自粛を勧告
今年1月3日現在、米国疾病予防管理センター(CDC)は日本での風疹の流行を懸念し、特にMMR(はしか、風疹、おたふく風邪の3種混合ワクチン)を接種していない妊婦、抗体価(風疹に対する免疫)が十分ではない妊婦は日本への渡航自粛を勧告している(警報レベル2)。
風疹?子どもの病気でしょ?死ぬわけでもないし、なぜ渡航自粛?と思うかもしれない。しかし、「子どもの病気」と誤解されているが、日本の風疹の新規患者の9割以上が成人であり、その3分の2以上が男性で占められる。しかも妊娠中の女性が感染した場合、母体内でウイルスに感染した胎児が先天的な障害を負って生まれるなど、妊娠しているかもしれない女性にとって(もちろん、その家族にとっても)、最も怖い感染症の1つなのだ。