書店員になったときにこの本があれば
あんなに苦労しなくて済んだ
書店員の仕事にはマニュアルがなく、口伝や仕事を盗んで覚えるしかないと言われてきた。そんな中『本を売る技術』という本が売っていたので買ってみたところ、本書には自分が書店員になったときに口伝で教わったことや、誰からも教わることなく、働いていた間にトライ&エラーを繰り返して、最適解だと思ってやっていた技術が書かれていた。本書を読み終えたとき、書店員になったときに、この本があれば、あんなに苦労しなくても済んだのに!という思いが強く残った。
書店を辞めてから5年近くが経ち、だんだん書店員時代の記憶もうすれつつある。自分が書店員時代に見聞きした、書店における暗黙知のようなものが、本書には論理的にまとめられていた。ここまで書店員の仕事を論理的に書いてある本はいままで見たことがない。とりあえず全書店員は本書を教科書のように読んだらいいと思う。加えて、10年間書店員として働いていた際、自分が意識していたことや、記憶している暗黙知についても少し話したいと思う。
著者の矢部潤子さんは芳林堂書店からパルコブックセンターを経て、リブロ池袋本店などで36年間、書店員として活躍をされていた方だという。パルコブックセンター渋谷店では、立ち止まらないと有名だったそうだ。とにかく売場を動き回り、品出しや棚整理、売れ行きを確認していたので、出版社の営業の人は著者と並走しながら話をしたとか。自分も書店員だったときは、品出しをしながら話を聞いていたことはあったが、移動しながら話を聞くということはさすがになかったと思う。