この7月、世界初の量産型電気自動車を発売する三菱自動車には、経営破綻した米ゼネラル・モーターズ(GM)をはじめ、世界各国のメーカーからOEM(委託生産)の依頼が来ているといわれる。環境技術は今や、自動車メーカーの生命線だ。だが、三菱自動車の益子修社長は、いくら日本勢が環境技術でリードしたとしても、圧倒的な独り勝ちは不可能と見る。ビッグスリー問題と環境対応に揺れる自動車ビジネスの行方から、電気自動車の“等身大”の可能性まで、縦横無尽に語ってもらった。
(聞き手/「週刊ダイヤモンド」編集部 山本猛嗣)

三菱自動車 益子修社長 Photo by K.Sumitomo

―ビッグスリーが相次ぎ破綻するような時代は想像できたか。

 ビッグスリーといえば、かつては“アメリカ”そのものだった。むろん、ここ数年、彼らが非常に厳しい状況に陥っているという認識はあったが、まさかチャプターイレブン(米連邦破産法第11条)適用申請に追い込まれるとは数年前までは考えたことすらなかった。

 ただ、その一方で、われわれ自身、再建途上にあり、他社のことをあれこれ心配している余裕はなかった。とにかく自分たちがどう生き残るのか、その一点に専念してきた。そこへ、景気循環だけでは説明できない急激な経済環境の悪化が起きたわけだ。

 率直に言って、今回ばかりは景気循環論で将来を読むことは危険だと感じている。これほどの状況の変化というのは、やはり自動車産業そのものが転換期に来ている証左だろう。1908年に自動車の大衆化の先駆けとなったT型フォードが世に送り出されて以来、自動車産業は大量生産・大量消費というビジネスモデルを続けてきた。偶然と言えば、偶然だが、100年目に、ちょうどその限界が訪れたのかと思う。

―ここ数年の米国の自動車市場は、はっきり言えば、バブルだった。だが、各社ともそれが見えなかったのか、あるいは目を逸らしたのか、こぞって設備投資に走った。今、その後始末に追われている。米国市場偏重のリスクは長く指摘されながら、なぜ実質的に是正されてこなかったのか。