つくばエクスプレスの春のダイヤ改正が発表された。目玉は、朝のラッシュ時間帯の運行本数増加。一方で通勤快速が消え、区間快速の停車駅が増えるなど、速達性は低下する。なぜこうした決断をしたのか、その理由を探ってみよう。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)
朝ラッシュ時間帯の
「通勤快速」が消える
今年8月で開業15周年を迎えるつくばエクスプレス。同路線を運営する首都圏新都市鉄道は1月30日、春のダイヤ改正の概要を発表した。今回のダイヤ改正の目玉は朝ラッシュ時間帯の輸送力増強だ。3月16日以降、平日朝のラッシュ時間帯ピーク1時間の運行本数は、現行の22本から25本に増発される。
2005年度に1日あたり約15万人だったつくばエクスプレスの利用者は、2012年度には約30万人を超え、2020年度は約40万人に達する見込みだ。その結果、近年は朝ラッシュの混雑が激化し、ピーク時間帯の平均混雑率(2018年度)は、私鉄では東急田園都市線、東急目黒線、東急東横線に次いで高い169%を記録している。
これに対して首都圏新都市鉄道は、2018年度から2020年度まで3カ年の中期経営計画で、新型車両「TX-3000系」の5編成導入、車両基地の増強、変電設備の改良など、輸送力増強のための「(1時間)25本化事業」を進めてきた。今回のダイヤ改正は、その集大成となるものだ。
だが、今回のダイヤ改正で注目すべきは、もうひとつの「異変」である。ダイヤ改正で、つくばエクスプレスは朝ラッシュ時間帯の「通勤快速」4本の運行を取りやめ、列車種別を「普通」と「区間快速」に統一する。また7時台~8時台の上り区間快速13本を、新たに「六町」駅に停車させる。
この結果、つくばエクスプレスの朝ラッシュ時間帯の上り列車は、全駅に停車する「普通」と、「柏たなか」駅、「流山セントラルパーク」駅、「青井」駅の3駅のみ通過する「区間快速」の2種類となる。これは速達性を売りにしてきたつくばエクスプレスにとっては、苦渋の決断ともいえる事態だが、このダイヤ改正の意図はどこにあるのだろうか。
理由のひとつは、増え続ける利用者への対応だ。つくばエクスプレスが開業した2005年度、乗車人員が1万人を超える駅は全20駅中、「つくば」「守谷」「流山おおたかの森」「南流山」「北千住」「秋葉原」の6駅だけだった。そのため開業時は、朝ラッシュ時間帯もその6駅に停車する快速列車が1時間あたり4本設定され、つくば〜秋葉原間を45分で結んでいた。
ところが沿線開発が進んだ結果、途中駅の利用者が増え、朝ラッシュ時間帯の快速運転は縮小。2012年には快速がなくなり、停車駅を増やした通勤快速に変更され、そして今回のダイヤ改正でいよいよ通勤快速もなくなることになった。