トライアル提供されるエコビトの画面イメージ。個別情報に合わせたアドバイスが特徴だ

 最近、電力不安や節電意識を背景に活況となっているのが、「電力見える化」サービスだ。これは、家庭内の分電盤や家電に計測器などを設置し、専用端末、あるいはパソコンやスマートフォンなどで電力使用量がひと目で確認できるもの。「家庭内エネルギー管理システム」(HEMS)の1つである。

 パナソニックやシャープ、NECなど電機大手、大和ハウス、ミサワホームなど住宅メーカーのほか、NTT東日本なども参入し、まさに群雄割拠の様相を呈している。

 今年4月には、経産省がHEMS機器の購入者に最大10万円を支給する補助金制度をスタートさせ、普及に弾みがついた。たとえば、補助金対象に認定されたNTT東日本が展開する「フレッツ・ミルエネ」では、分電盤計測器や専用端末2台、データを集める無線親機などの7万3500円のセットに対し、7万円が支給される(消費税分は対象外のため、3500円は自己負担)。本体価格が「タダ」で購入できるわけで、「認定を契機に契約者が多くなった」(同社広報室)。

 しかし、肝心なのは、電力使用量が「見えた後」の対処法だ。「エアコンの設定温度は28度」「電気はこまめに消す」「使っていない家電のコンセントを抜く」など、具体的な行動を取っている人も多いだろう。しかし、それらが「アナタの家にとって最適な節電行動か?」と問われると、自信がない人がほとんどではないか。

 そこに目を付け、開発されたサービスが、KDDIと住友商事が提供する「エコビト」である。エコビトでは、電力使用量に加え、家族構成や居住地域の天候、使用する家電機器、ライフスタイルなど、様々な個別情報を基に、その家庭にとって最適な節電行動を定期的にアドバイスする。

 アドバイスは、環境エネルギー総合研究所が持つ650万パターンにも及ぶ膨大な省エネ関連データを活用し、独自のアルゴリズムにより、個別情報に合わせて自動生成され、提供される。

 まさにエコビトは豊富な知識とノウハウを持つ“節電先生”というわけだ。「個別指導」が受けられることで、自己流では無理だった節電効果が期待できる。また、「一般的な節電アドバイスでは、ユーザーは画一的なつらい節電を強いられることが多いが、エコビトでは自分に合った快適で実行可能な節電のアドバイスが受けられる」(KDDI広報部)。

 エコビトは、まず今年7月30日から無償のトライアル提供を開始した。200世帯のモニターを対象に約半年間実施し、来年度中の商用サービス開始を目指す。

「電力見える化」では、その蓄積されるデータをいかに活用するかがカギとなる。節電アドバイス以外にも、たとえば、電力使用量の極端な増減から居住者の状況や安否を知らせる介護・見守りサービス、太陽光発電、蓄電池、省エネ家電の広告・販売関連サービスなども考えられる。「見えた後」になにができるかが肝心なのだ。

(大来 俊/5時から作家塾(R)