IT分野に限らずさまざまな分野で活用が進んでいるビッグデータ。膨大な情報を分析し、より良いサービスを提供する動きは、身近な衣食住の分野へも広がりを見せている。
料理レシピサイト「クックパッド」は昨年12月、全国の食品スーパー7社と提携した。クックパッドのIDと店舗の会員番号を連動させることにより、検索や購買履歴データを双方のマーケティングに活用している。
日本マクドナルドホールディングスでは、顧客の購買特徴を分析し、携帯電話を通じて個別にクーポンを配布。例えば、一定期間来店のない人には、以前よく購入していたハンバーガーの割引クーポンを送信して来店を促すなど、個別の販促が可能だ。
医療分野でも期待が高まっている。徳島大学病院では、地域の病院や保健センターが保有する患者情報を蓄積し、糖尿病などの慢性疾病管理に利用することで、医療の質を向上させている。
そして、節電が叫ばれるこの夏――ひときわ注目されるのが、住宅分野でのビッグデータの活用だ。キーワードは、もちろん「省エネ」。
積水化学工業株式会社が提供するスマートハウスには、「スマートハイム・ナビ」というコンサルティング型HEMS(home energy management system:家庭向けエネルギー管理システム)が搭載されている。
昨今、耳にする機会も増えてきたが、HEMSとは、センサーや電力制御技術を駆使して、住宅のエネルギーを管理するシステムのこと。家庭内の家電製品単位や部屋単位で、電力が、いつ、どれだけ使用されているかが分かるようになるので、機器の使用をコントロールする目安とすることができる。
「スマートハイム・ナビ」は、2011年4月の発売開始後、数千棟の搭載実績を持つ。これまで蓄積してきた膨大なユーザデータを分析した結果、各戸ごとに最適な省エネのアドバイスを可能としている。
ユーザーは「スマートハイムFAN」という専用WEBサイトでデータを確認し、光熱費削減のアドバイスを受ける仕組みだ。例えば、自宅に設置したHEMSから配信された消費電力値と、同じ設備・家族条件の居住者平均から割り出した標準値。この2つの数値を比較したグラフをWEB上で自動作成。コンサルティングレポートとして配信している。
5月からは、顧客の属性分類が800パターン、省エネアドバイスの種類も3万パターンに増強された。データ量の増加によって、より精度の高い分析が可能になったわけだ。10月には、新たに蓄電池に関するコンサルティングも始めるという。
HEMSの課題と言えば、現状はコストの高さ。だが、この4月から経済産業省が導入に対して上限10万円の補助金を出すなど、HEMSへの期待は今まで以上に高まっている。
(吉田由紀子/5時から作家塾(R))