厚労省での男性育休取得率は
53.5%まできている

加藤 厚労省での男性育休取得率は、現在53.5%です。そして、取得日数1月未満が73.9%。1月以上が20%という現状にあります。

小室 男性育児休業取得率53.5%は素晴らしいですね。そして、多くの企業ではまだ育児休業といっても数日程度なのに対して、1カ月以上の取得が2割もあるのですね。2020年度からは、国家公務員の男性育児休業は原則1カ月を推進していくというニュースも拝見しました。国家公務員の取り組みによって社会の空気が変わることで、今まで制度はあってもなかなか実際には取得できなかった民間企業の男性たちにとっても、大きな追い風になりそうですね。
 
 2019年春の労基法改正は大きく流れを変えました。70年ぶりの法改正によって労働時間の上限が設定されたからこそ、民間企業の人事が「どうしたら男性を休ませられるか、帰らせられるか」を本気で考えるようになりました。

民間企業で「フラリーマン」を
増やさないためにできること

小室 当初、企業が昔ながらの軍隊式に「帰れ」「休め」の大号令をかけたところ、「今さら早く帰っても家族に喜ばれない」という方が大勢出てきて、退社後に家ではなく飲み屋さんに直行する「フラリーマン」が大量発生してしまいました(笑)。早く帰ることで、残業代は減って飲み代が増えて、会社への不満が増えるという状況が生まれてしまった。

加藤 たまには飲みに行くのもいいですが、「帰りたくない。帰っても家族から喜ばれない」というのは、望ましい状況とはいえません。

小室 企業側もやっと、ただ帰らせるだけじゃなくて、帰りたくなるような家族との関係性を築けていることが重要だと気づきました。「早く帰りたい」という内的欲求がない人は、生産性を上げようとか、新しいやり方にチャレンジしようとは思わないからです。そういった背景から、企業側が男性育休の重要性を理解し始めていると同時に、政府も少子化対策に前向きな今が、千載一遇のチャンスといえます。

加藤 育児休業の取得率を上げるのはもちろん、早く帰れる環境をつくることで、育児以外にも自己研鑽や趣味の時間を充実させるなど、いろいろな展開につながっていくわけです。結果的に、複線型キャリアパスの実現にもつながっていきます。

小室 私は2020年は、睡眠が大きなテーマになってくると思います。斬新で質の高いアウトプットを出すためには、睡眠の長さと質が問われてくるし、すでにそこに注目している企業は、6時間以上睡眠を取るとポイントが加算されて、会社のカフェなどで使えるアプリなども導入しています。

 今回の法改正では努力義務として導入された、勤務と勤務の間に一定の休息時間を空けるインターバル規制の考え方も、今後注目されますね。

加藤 今回の法改正では、年次有給休暇5日間取得義務化も導入されています。それによって、仕事のやり方自体がいかに属人化させずに社員間でシェアしていくかという方向へと変わってきています。

 育児休業に限らず、それぞれが自分の希望で休みを取り合う状況ができれば、仕事のやり方や企業文化の変化も加速していくと思います。予想を超えて進む少子化に、厚労省としても骨太の方針に盛り込まれた「育児休業について制度的な改善策を含めて検討し、男性の育児休業取得を一層強力に促進する」べく努力して参ります。

小室 今日は、たくさん前向きなお話をうかがうことができました。ありがとうございました。