「閣僚たちも新聞は見ただろうな。怒り出すぞ。自分たちを差し置いて、ことが進んでいることを知れば」

「内閣は説得出来るとしても、党内はどうします。反対の方が多いでしょう。野党は騒ぎ出すでしょうし、マスコミ対策も考えなければなりません。しかしなにより、国民が納得するでしょうか。すでに関係省庁には問い合わせの電話が殺到しています。大部分が反対しているとの報告も来ています」

 テレビの朝のワイドショーも軒並み番組を変更して首都移転を扱ったモノに変わっている。

「やはり緊急記者会見を開く必要があるな」

「準備をされてからのほうが賢明かと。とんでもない質問が出るやも知れません」

「記者会見というより、新しい首都移転計画を国民に伝える会見だ。質問など受ける必要はない。そうだ。私が首都移転を直接国民に訴える説明演説にしよう」

 総理は秘書と官房長官に向かって言った。

「いつなされます」

 総理はしばらく考えていた。

「直ちに場所の準備をしてくれ。テレビを中心に話すことにする。今日これからの予定はすべてキャンセルにするように。閣議もだ。閣僚たちにも、私の話を聞くよう伝えてくれ」

 秘書は驚いた顔をしたが、何も言わず軽く頭を下げて出ていった。

「用意が出来るまでどのくらいかかる」

「各メディアに伝えて会場を用意しなければなりません。2時間は必要です」

「1時間で用意してくれ。その間に資料をそろえるように」

「資料と申しましても――」

「首都移転チームの報告書があっただろう。それと、首都移転準備室のものだ。各閣僚にも同様のものを配るように」

 総理は慌ただしく言うとデスクに座った。