ブログやツイッターなどを使いIT分野に造詣が深い総務官僚の谷脇康彦氏。近著『ミッシングリンク―デジタル大国ニッポン再生』(東洋経済新報社)では日本の電機、情報通信産業の課題点を明らかにした。著書を政策立案の「ベータ版」として、国民から意見を集め政策に反映させていく試みでもあるようだ。(聞き手/「週刊ダイヤモンド」編集部 小島健志)

谷脇康彦(たにわき・やすひこ)/1960年生まれ。84年、郵政省(現総務省)入省。2002年在米国日本国大使館参事官、05年電気通信事業部料金サービス課長、07年電気通信事業部事業政策課長、08年情報通信政策課長、11年大臣官房企画課長を経て現在、情報通信国際戦略局付。著書に『インターネットは誰のものか』(日経BP社)『融合するネットワーク』(かんき出版)などがある。
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――今回、タイトルの「ミッシングリンク」に込めた気持ちは何か。

 iPhoneが世に出たときに、日本のメーカーの方が「こんなものならうちでも作れる」と言っていた。恐らく本当に作れたのであろうが、結果はiPhoneが世界を席巻した。

 iPhoneには、音楽や動画を配信するiTunesやApp Store上にある豊富なアプリ、優れたユーザーインターフェース、デザイン、クラウドサービスに利用者のコミュニティがある。モノ単体で存在しているのではなく、トータルで価値を高めているのだ。

 つまり、製品を売っておしまいという「完結型」ではなく、端末をハブとしてモノとサービスとを一つにつなぐ「連結型」のビジネスモデルが世界の中心になったのだ。

 日本は「モノ作り大国」と言われただけあり、確かにその技術力は過少評価すべきではない。だが、これまでのような1社単独主義の限界を迎えているのは明らかだ。

 情報通信産業は、機器メーカーやソフトウェア開発会社、通信事業者らが複雑に絡み合った「デジタルエコシステム(生態系)」を構築している。裏を返せば、1社ですべてをコントロールすることができなくなったと言える。

 この市場構造の変化を受け、どこと手を結ぶべきなのかを考えるべきだが、日本の国も企業もどうもうまくできていない。

 異業種間で連携して「環」を築かなければならない。その欠けたところを「ミッシングリンク」として問題提起したのだ。