マーク・アンドリーセン氏は今月上旬、カリフォルニア州メンロパークのホテルで朝食を食べ終えた頃、隣のテーブルに友人のイーゴン・ダーバン氏がいるのを見つけた。投資会社シルバーレイクの共同最高経営責任者(CEO)を務めるダーバン氏は、握手しようと手を差し出した。
アンドリーセン氏は、手の代わりに肘を差し出した。
「われわれはバーチャルな肘バンプ(ぶつけ合い)をするようにしている」とアンドリーセン氏は述べた。同氏が共同創業したベンチャーキャピタル会社アンドリーセン・ホロウィッツは、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて「握手なし」方針をつくったと説明。ダーバン氏と同席していたウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)記者にも肘を差し出した。
新型ウイルスの感染が急速に拡大する中、世界中で仕事の会議や業界会合の中止が相次ぎ、さらには最も基本的なビジネスのエチケットが見直されるようになった。そう、握手である。
シリコンバレーにあるアンドリーセン氏の会社の本社には、訪問客に「握手なしでお願いします」との表示が掲げられている。スペインのバルセロナで今月開催予定だった世界最大のモバイル関連見本市「MWC」では、開催中止が決まるまで参加者に「握手なし」を要請していた。16日に閉幕したシンガポール航空ショーは「接触なし」方針で、お辞儀や手を振るといった握手以外のあいさつが提案されていた。
こうした現象は、新型コロナウイルスの感染拡大が世界の日常を変えつつあることを示している。