“私たちはつねに、幸福への思い込みのせいで、地位財をたくさん蓄えれば(見栄を張って他人と同じようにすれば)、いつかは幸せになれるはずだと考えますが、客観的にいって、それはあり得ません。一方で、健康、自主性、社会への帰属意識、良質な環境などは、真の幸福をもたらすものです。”

おわりに

 本書の後半では、遺伝と幸福度に強い相関があること(一卵性双生児に対する幸福度調査など)、神経症的な傾向、外向性などの性格要因によって感じる幸福度の半分近くを説明できてしまうこと(性別、年齢のの関与要素は1%。所得は3%。社会階級は4%。結婚の状況は6%。神経症的傾向は6~28%。外向性は2~16%。その他の性格要因が8~14%)など、「どのようにして個人の幸福感が決定されるのか」に関する研究が紹介されていく。

 性格や遺伝によってかなりの部分幸福感が決定づけられているとしたら、ある人物の10年後の幸福度を推測したければ、その人物の職業や所得よりもその性格調査をする方が重要だ、ということだ。では、生まれつき神経症的傾向を有し幸福度を感じにくい人間はそのまま絶望に沈み込むしかないのか──といえばそうではなくて、どのようにすれば感情をコントロールし、幸福度を変えるのかについて。また、幸福が実際には人生における究極の目的ではないということについてものべられていくので安心してほしい。幸福を求めるのは重要だが、それ以上に「まず、幸福とは何なのか」を知ることが重要なのであり、本書はその一助になってくれるだろう。

(HONZ 冬木糸一)