新型コロナ蔓延で観光業は大打撃――そんなニュースがちらほら出ているが、実は観光業は天変地異や不況にもめっぽう強い。一時的には落ちるが、回復力がめざましいのだ。実際、中国人の消えた京都には日本人が殺到しているし、アジア最強の観光地であるタイは、リーマンショック後もあっという間に回復。今回も欧米人やインド人で賑わっている。(ノンフィクションライター 窪田順生)

新型コロナ蔓延でも
賑わっている観光地がある!

京都の二寧坂祇園や二寧坂は今、日本人観光客で賑わっている。観光地としての魅力を磨いていれば、一時的な落ち込みはあっても、深刻になる必要はないのだ Photo:PIXTA

 先日、祇園や二寧坂など京都の有名観光地が、日本人観光客で賑わっている写真がSNSで話題になった。

 ご存じのように、ここ最近の京都は、右も左も外国人観光客がごった返し、地元住民の日常生活にまで支障が出る「観光公害」が問題となっていて、国内の観光客から敬遠されていた。それが、新型コロナの影響で中国人観光客が消えたことで、「そうだ、京都に行こう」と思い立つ日本人が増えているというのだ。

 実際、この話題を受けて、SNSでは「俺も同じことを考えていた」「今がチャンスかも」なんて声が上がっている。ちょっと前、嵐山周辺の商店主らが、新型コロナでの閑散ぶりを逆手にとって、「スイてます嵐山」「人間よりサルの方が多いとか、久しぶり」という自虐PRを仕掛けたことがニュースになったが、まさしくそのような方向性がドハマりしているのだ。

 今回、京都で見られたこの現象は、「観光立国」を目指す日本に非常に大きな「教訓」を与えてくれている、と個人的には考えている。それはザックリと言うと、こんな感じだ。

「どこかの国からの観光客が消えても、観光地としての魅力を磨いていれば必ずリカバリーできるので、そこまでパニックになることではない」

 日本では「観光業」というと、どうしても「客の事情に左右される不安定なサービス業」というイメージが強い。景気、天候、災害などの影響をモロに受けるため、長い間、国や自治体の基幹産業にはなりえないと思われていた。

 しかし、これは大きな誤りだ。本来の観光業というのは、どこかのひとつの地域からの客が減ったら、「いまは空いているから狙い目かも」と、別の地域の人々が訪れるというように、「世界」を相手に商売ができるという強みがあるので、実はかなり手堅い産業なのだ。

 実際、京都と同様のことがタイ屈指の観光地・パタヤでも起きている。地元有力メディア「The Pattaya News」では、2月21日に撮影されたという、欧米からの観光客で賑わうパタヤビーチの写真を掲載し、新型コロナで中国人観光客や韓国人観光客がまったく来なくなって観光業者が打撃を受けている一方で、「欧米人観光客やインド人観光客はむしろ増加しており、全体としては思ったほど観光業への悪影響は大きくならないかもしれません」(The Pattaya Newsの日本語版を配信しているPJAニュース 2月25日)というのだ。