政府が掲げる「2020年に外国人観光客4000万人」という目標に陰りが出ているが、その原因の一端は、日本の「多すぎるビジネスホテル」にある。外国人観光客の多くがビジネスホテルに泊まらざるを得ない現状が、リピーター予備軍である「親日外国人観光客」を失望させ、「観光公害」の原因にもなっている可能性があるのだ。(ノンフィクションライター 窪田順生)
「20年に外国人観光客4000万人」
政府目標にここへ来て暗雲
外国人観光客なんていっぱいやって来られても迷惑なだけだ――。日本全国で聞こえる不平不満が天に届いたということなのか。
これまでイケイケドンドンだったインバウンドにかげりが見えて、日本政府が掲げていた「2020年に外国人観光客4000万人」という目標にも暗雲が立ち込めてきたのである。
今年1月11日、閣議を終えた石井啓一国土交通相が明かした2019年の訪日外国人観光客数は3119万人(推計値)。いくら今年はオリパラで世界中から観客がやってくるとはいえ、たかが17日間のイベントだ。ここから800万人以上も上乗せするのはかなり困難である。
実際、JTBが昨年12月に公表した2020年の訪日外国人観光客数の試算も、政府の目標を大きく下回る3430万人となっているのだ。
では、フランス(8940万人)やタイ(3800万人)に匹敵する観光大国になるのも夢ではない、とさんざん持ち上げられてきた日本のインバウンドが、なぜここにきて伸び悩み始めたのか。
日韓関係の悪化で韓国人観光客が激減したからという人も多いだろう。中国経済の失速で、中国人観光客もかつてのほどの勢いがなくなったからではと考える人もいるかもしれない。
いろいろな見方があるだろうが、個人的にはこれまでだましだましやってきた観光政策の致命的なミスが引き起こしたある問題のせいではないかと思っている。
それは「ビジネスホテルが多すぎる」という問題だ。