世界経済への楽観は、文政権の経済運営の失敗に苦しむ韓国経済にとって、資産価格などの安定に大きな役割を果たしただろう。新型肺炎は、経済と政治の両面において、韓国を大きく揺さぶり始めているように見える。

 新型肺炎は、成長の限界を迎えた中国経済をさらに減速させるだろう。今後、韓国が中国への輸出を増やし、成長につなげることはかなり難しい。すでに韓国では自動車業界を中心に生産活動が鈍化している。それが長期化すると、企業の資金繰りや労働市場が悪化する恐れがある。

 韓国の家計債務は可処分所得の180%程度に達した。雇用・所得環境が不安定化すれば、内需は下押しされるだろう。状況によっては、韓国経済が本格的なデフレに陥る展開も考えられる。そうした見方から、ソウルの株式市場では、現代自動車やサムスン電子などだけでなく、小売りをはじめ内需関連銘柄も売られている。

 次に、新型肺炎は中国との関係を重視してきた文政権のリスクをも顕在化させつつあるようだ。韓国国内では文政権が中国との人の往来などを制限しなかったために、感染が拡大しているとの批判が出ていると聞く。大邱(テグ)市では感染者が急増している。政府関係者や軍関係者にも感染者が出ている。一方、文政権は中国からの入国制限を強化してはいない。

 その状況を受けて、米国は新型肺炎のリスクを警戒し、今春に予定されている米韓合同軍事演習の延期を決定した。背後には、今回の肺炎の感染ペースがかなり速いといった危惧があるのだろう。米国の感染症対策の専門家は感染拡大への危機感を表明している。

 そうした中にあっても、4月の総選挙を控え、文在寅大統領が中国重視の姿勢を修正することは困難だろう。経済運営だけでなく、文氏が南北統一を重視するためにも、中国との関係は欠かせない。新型肺炎の感染拡大は韓国の経済と政治のリスクを浮き彫りにしたといえる。

不透明感増す
世界経済の先行き

 生産活動を中心に韓国経済が直面している状況は、世界各国にとって人ごとではない。

 2月下旬に入り米国の金融市場では、株価の下落に加え、3カ月の短期金利と長期金利(10年国債の流通利回り)が逆転した。世界経済の先行きを考えるにあたり、米長短金利の逆転は無視できない。必ずそうなるとはいえないものの、過去、長短金利が逆転してから2年程度の間に米国が景気後退に陥ったことがある。新型肺炎の感染拡大が米国の個人消費や企業の設備投資を減少させ、米景気が後退局面に向かうとの警戒を強める市場参加者は増えている。