それの連想であろうか、「トイレットペーパーが足りない」という噂が流れ、それを信じた消費者がトイレットペーパーを大量に購入したようで、本当にトイレットペーパーが足りなくなっている。

 トイレットペーパーの場合は、マスクと異なり、実際の需要が増えたはずはないので、仮需によるものであろう。メーカーが「在庫は十分ある」と言い、政府が「冷静な行動を」と呼びかけているのに、なぜ人々は買い急いだのだろうか。

 それは、人々が合理的だからである。メーカーや政府が何と言おうと、トイレットペーパーが実際に店頭から消えたわけであるから、早めに買った人は「合理的」だったのだ。

「在庫は十分ある」というメーカーの根拠は?

 トイレットペーパーが店頭から消えたことを受けて、メーカーは「在庫は十分ある」と言っている。だが、何に対して十分なのだろうか。「通常時の売り上げと比べて在庫の方が多い」というメッセージには何の意味もない。

 人々は「普段より多めに買っておこう」と考えて購入するであろうから、その購入数量と比べて在庫が十分にあるのか否かが重要である。だから問題は、人々の意識が変化しなければ解決しない。

「通常は1週間分持っているが、不安だから2週間分買っておこう」という人が増えると、売り切れる。そうなると人々は「品不足が2週間以上続くといけないから、1カ月分買っておこう」と考えるようになるから、いつまでたっても店頭の品切れ状態が解消せず、人々は一層不安になり……という悪循環が生じかねない。

「足りないというのはデマです」とメーカーが言っても、デマを信じた人々が大量に買うことでデマが現実になってしまえば、それはもはやデマではなく、現実なのだ。