新型肺炎の影響で品薄になっているマスクを大量に購入して、大手フリマサイトやネットオークションにおいて高値で転売するケースが相次いでいる。これは不愉快な行為であるが、残念ながら禁止できない事情がある。(久留米大学商学部教授 塚崎公義)
マスク不足がさらなる不足を呼ぶ
新型肺炎の流行が広がっていることから、人々がマスクを着用するようになり、マスクが売り切れる店が続出している。そうなると、人々が「これまでは使うたびに買っていたが、売り切れる前に10枚ほど買っておこう」などと考えるようになるので、さらにマスクが売り切れるようになり、ますます買い急ぐ人が増えるといった悪循環に陥ることになる。
それ自体は、自然なことである。地震などの災害時にコンビニやスーパーの食料品が売り切れることは珍しくないし、古くは第一次石油ショック時にトイレットペーパーが売り切れたこともあった。
問題は、インターネットの発達により個人間の売買が容易になったことである。多数のマスクをいち早く購入して、誰でもネットを通して高値で転売できるのだ。
日本人の常識や倫理観からすると、「困っている他人の足下を見るような金もうけをするのは良くない」し、筆者自身もそういう気持ちはあるので、自分では高値転売をしようとは考えていないし、転売者には良い感情を持っていない。
しかし、こうした感情を離れて冷静になると、彼らも社会に役立っているのかもしれないという考えに至る。筆者には温かい心と冷たい頭脳があり、以下では敢えて温かい心を封印して冷たい頭脳に活躍してもらうので、読者におかれても感情的にならずに冷静に読んでいただければ幸いである。