SNSで大きな話題になっている「AKIRAの予言」――。80年代の漫画「AKIRA」には、東京五輪が2020年に開催されることはもちろん、伝染病が蔓延することや、日本がWHOから問題視されることなど、今の日本の状況が描かれているとしか思えない描写がいくつもあるのだ。なぜ「AKIRA」は未来を当てられたのか?その理由は、意外にも簡単に見つけられる。(ノンフィクションライター 窪田順生)
80年代の漫画が
今の東京を「予言」した!?
「AKIRA」の“予言”がSNSで大きな話題になっている。
「AKIRA」とは大友克洋氏が1982年から「週刊ヤングマガジン」に連載していたSF漫画で、88年にはアニメ映画が公開。「ジャパニメーション」の代名詞として海外でも高い評価を受け、誕生から38年経過した今も世界中で多くのファンに愛されている作品だ。
どれくらいこの「AKIRA」がスゴいのかというのは、日本でもおなじみのスティーブン・スピルバーグ監督が「こんな作品を作りたかった」などと絶賛し、グラミー賞常連の世界的ミュージシャン、カニエ・ウェストが「この映画は俺のクリエイティビティにもっとも影響を与えている」と発言していることからもわかっていただけるのではないか。
さて、そこで「AKIRA」のことをご存じのない方が次に気になるのが、「予言ってナニ?」ということだろう。この日本が誇るSF作品が、いったい何を言い当てて、どんな未来を予見しているのか。そのあたりを正確に理解していただくためには、まずはこの「AKIRA」がどんな物語なのかということを知っていただく必要がある。
舞台は、2019年の「ネオ東京」。ネオって、と半笑いになる人たちの気持ちもわかるが、これにはちゃんと理由があって、作中で東京は原型をとどめないほどの壊滅的な被害に遭って新しく生まれ変わっているからだ。
1982年、東京で新型爆弾が炸裂し、これが引き金となって第三次世界大戦が勃発。凄まじい爆発で巨大なクレーターができ、大半が水没してしまった東京は戦争が終わると、「ネオ東京」として復興の道を歩み出した。そして2020年の東京オリンピックを控えたこの街で、「AKIRA」という凄まじい超能力を持つ子どもを巡る争いが繰り広げられていくのだ。そう、この作品はなんと30年以上前に「TOKYO2020」が開催されることを予見していたのだ。
この他にも作品内の描写が現実とピタリと重なっている。
例えば、「AKIRA」の第2巻の中で、その東京オリンピックの競技場の建設現場が描かれているのだが、そこには「開催まであと413日」という看板とともに、「中止だ 中止」という落書きがなされている。
「TOKYO2020」が開幕する今年7月24日の413日前は2019年6月7日。この月は、五輪招致時の「裏金疑惑」をめぐってフランス当局から捜査対象となっていた、竹田恒和・JOC会長(当時)が任期満了で退任している。これを受けて、五輪反対派からは、「グレーなままでまんまと逃げおおせた」「こんな黒いオリンピックは中止にすべき!」という批判が持ち上がっていたのだ。
それだけではない。なんと「AKIRA」には現在、日本のみならず世界に混乱を引き起こしている新型コロナウィルス騒動を連想させるような描写も確認できるのだ。