ご近所力を育てる
息の長い取り組み

齊藤広子教授
明海大学不動産学部

 前述のEさんやIさんたちの例のように、私道を挟んで数戸が一度に分譲される宅地は少なくない。昔の大きな敷地を割って分譲するためミニ開発と呼ばれるが、最近では私道で花火やバーベキューができるなど、人がつながりやすい側面が見直されている。

 もう少し大きな規模の分譲開発になると、道路をくねくねとした曲線にして周囲に植樹して木陰をつくるコミュニティ道路など、大がかりな仕掛けも設置される。通過交通量を抑え、不審者の侵入防止といった防犯効果があり、子どもの「広場」として活用できる。この点は、ミニ開発の私道と一緒だ。

 「小さな私道もコモン(共有スペース)として積極的に活用するという視点が芽生えれば、コミュニティが活発化します。住民同士が親しくなれば、敷地内に知らない人を見掛けたときに自然と『どちらをお探しですか?』と声を掛けるようになりますよね。これも立派な犯罪抑止効果です。この街が好きだからみんなで守るという、安心・安全の意識が個人から地域・地区に広がっていくと、訪れた人がなんとなく、住み心地がいい街だと感じるようになります。この心地よさが愛着を生み、それとともに、もっといい街にしていきたいという思いが生まれるのです」(明海大学不動産学部・齊藤広子教授)。

 こうしたプラスの循環が街の価値を向上させるのにつながっていくのだ。

 齊藤教授は、学究だけでなく実際に分譲地をプロデュースしており、新しいコミュニティを育てる実践にも携わっている。そこでは住民同士の交流を深めるために、定番のバーベキュー大会をはじめ、母の日イベントやクリスマスリースづくりといった季節に合わせた行事が開催されている。あるいは、いったん家に帰って食事を終えたお父さんたちが英国のパブのように集って飲める場などもある。

 戸建ての場合は特に、道路から直接家の中に入ってしまうことが多いため、意識しないと、近隣住民との交流が育ちにくい。さらに、子どもがいない家庭や、夜間に留守にすることが多い家庭などライフスタイルの多様化もあるため、周到に考えて、きめ細かい仕掛けを施すことが必要になってくる。

 このように手間と時間はかかるが、良好なコミュニティが形成されたら防災・防犯面が強化される上、住宅地の資産価値が高まるという余得がつく。

 海外ではそうした事例として、英国のレッチワースや米国のラドバーンが知られている。日本でもそれらに倣った、相鉄いずみ野線「緑園都市」駅周辺(横浜市)や阪急電鉄「彩都(国際文化公園都市)」(大阪府茨木市・箕面市)などの開発がある。
いずれの例も、管理組合などを立て、住民が自ら街づくりを計画・実行していく。そして、それが継続することがポイントである。

 「問題が起きたときに、それを『自分たちの問題』と認識して取り組むこと。これが、コミュニティのベースになくてはなりません。誰かがやってくれるという受け身では続かない。『私たちがやるんだ』という主体性が不可欠なのです」(齊藤教授)

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この記事が収録されている「週刊ダイヤモンド」別冊 2012年9月30日号 『新築マンション・戸建て 「王道」の住宅選び』の詳しい内容はこちらからご覧いただけます。

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