東日本大震災以降、住まい選びのポイントとして大きく浮上してきたのが、地震に対する建物の強さと、いざというときのご近所力だ。今回は建物の強さの基本である「地盤・構造」について考える。
東日本大震災後の
「都心・湾岸回帰」傾向
地震に関する調査研究にはいろいろな種類がある。例えば防災科学技術研究所の地震ハザードステーションには、「今後30年に震度6以上の揺れに見舞われる確率」が、全国各地にわたり詳細に掲示されている(下図、抜粋)。確率ゼロの無色のエリアはほとんど存在せず、確率が比較的低い黄色いエリアの上にも四角い枠で示された主要活断層帯が重なり合って広がる。日本はまさに地震大国だ。
出所:防災科学技術研究所「地震ハザードステーション」 http://www.j-shis.bosai.go.jp/
これから住宅を取得するなら、「地震が来る」前提で災害時に命を守る住まいを選びたい。家の「強さ」の目安に挙げられるのが、建築基準法の「新耐震基準」だが、それをクリアしていれば大丈夫なのだろうか。
日本大学理工学部建築学科
特任教授
「建築基準法で定めているのは、建てるときの最低限の基準です。そもそも建築物は、自動車のような工場で生まれる製品と違って、1棟ずつ違う条件のもとに建てられます。ルールを守って建てた、ということと、安全であるということは別」と語るのは、構造設計が専門の日本大学の神田順特任教授だ。
建築基準法で定めているのは、地震により地表で水平に400ガルの加速度が働いても倒壊しないこと。関東大震災や阪神・淡路大震災では、場所によりその1.5倍の600ガルの揺れも起きたという。
「仮に今、600ガル揺れたら、新耐震基準を満たした建物のうち0.5%程度が倒壊すると試算されます。10万棟の建物があれば500棟ですね。確率としては高くないが、自分が住むなら、もう少し高いレベルで設計してほしいと思う人が多いのではないでしょうか」(神田教授)
地盤チェックは
探す際の大前提条件
出所:『安全な建物とは何か』(神田順著・技術評論社)
建築基準法で定めているのは、標準的なルールであり、設計者はルールを守りつつ、条件の異なる土地に合わせて、個々の建物を設計していく。その際重要なのが、どこまで地盤の特性をていねいに評価しているかだ。
「標準貫入試験といって、上からおもりを落下させて地盤の固さを測るテストがあります。その結果はN値で示され、50以上が比較的堅い地盤ですが、都市部や海のそばではN値10を下回るところもあります。それが砂地だったりすると、液状化の恐れもあります」(神田教授)