近年、大企業を中心に進んでいる働き方改革。労働時間削減やリモートワークの実施など、さまざまな施策を講じて労働環境の改善に努めている。しかし、働きやすさを重視した結果、もうひとつの課題が浮かび上がってきたという。(清談社 真島加代)
働きやすくなったら
やりがいがなくなった
2019年4月に働き方改革関連法が施行されてから、自身の働き方に変化を感じている人はいるだろうか。法施行から半年後の2019年10月に、Great Place to Work(R) Institute Japan(以下、GPTWジャパン)が“働きがい”に関する調査(*)結果を発表した。
「2018年版と2019年版の調査結果を比較したところ『働きやすさ』が改善された企業の数が、低下した企業の数を上回りました。各企業の職場環境は整備されつつあるようです」
そう話すのはGPTWジャパンシニアコンサルタント・今野敦子氏だ。GPTWジャパンは、アメリカを拠点に世界60カ国で各国企業の「働きがい」に関する調査・分析を行っている専門機関、Great Place to Work(R) Instituteの日本法人。同社のアンケートは「働きやすさ」に関する設問と「やりがい」に関する設問で構成されているという。
「『働きやすさ』の設問はワークライフバランス、労働環境、福利厚生に関する内容で、『やりがい』の設問は経営・管理者層への信頼、仕事への誇りや意味付け、連帯感や一体感など。合計58問を点数化して集計しました。参加した199社のうち、『働きやすさ』の改善がみられたのは104社(52%)。前年よりも大幅に改善されたのは『仕事と生活のバランスをとるように推奨されている』『必要なときに休暇がとれる』など、働きやすさに関する項目でした」
残業禁止やリモートワークの推奨など「企業が従業員の『働きやすさ』を重視して改革を進めた結果だろう」と今野氏は分析する。
「しかし同時に、199社のうち107社(54%)の『やりがい』が低下したという結果が出ました。つまり、従業員は働きやすくなったものの、仕事へのやりがいが感じられなくなってしまったのです。これは“働き方改革の功罪”といえます」
とくに大きく低下したのは「会社全体で成し遂げている仕事を誇りに思う」という仕事への“誇り”と、「経営・管理者層は事業を運営する能力が高い」という、管理者への“信頼”、2つの「やりがい」要素だったという。
(*)…『「働きがいのある会社」調査2019』/対象:参加企業199社/期間:2017年10月~2018年9月(2018年調査)、2018年10月~2019年9月(2019年調査)の2カ年の結果を比較。