韓国のマスク対策は北朝鮮と同じ
強硬策はむしろ生産性を落とす

 丁世均(チョン・セギュン)首相は8日、国民向けの談話を発表し、マスクの品薄状態が続いていることに対し、9日から出生年によってマスクを購入可能な曜日を指定する「マスク5部制」を実施すると発表した。

 政府は、薬局・郵便局・農協にマスクの重複購入を調べるシステムを導入、マスクの購入数を1週間に一人2枚までに制限する計画である。購買者は購入者の身分証を確認し、購入履歴をチェックした上で販売することになる。

 しかし、1週間に2枚でどのように暮らすのかと国民の不満は絶えない。また、販売者も購入履歴のチェックなど業務負担ばかり増やす政策に不満をぶちまけている。

 他方、マスク生産者に対しては生産量の80%を政府に納品することを義務付けた。しかも、政府調達庁は生産原価の50%のみ認めるという通知とともに、1日の生産量の10倍に達する生産量契約を求めてきているという。「政府がマスクメーカーに一律で指針を適用し、マスクが必須の医療機関向けに生産販売していることすら不法扱いした」という。

 生産量を増やすために人員を増やし、残業を行わせ、さまざまな手当てでコストが上昇したがこれも政府は認めなかったという。あるマスクメーカーは「これ以上損失を覚悟でマスクを生産しなければならない名分も意欲も完全に失った状態だ」として生産中断を決断した。

 また別のマスクメーカーは「食品医薬品安全処の職員が工場に陣取り、生産量が期待に満たないと従業員をいじめる。われわれは罪人なのか」と語ったという。これは「民主主義、資本主義ではなく共産主義の供出制度」だと憤慨している。

 文在寅大統領は先月25日、「マスク需要を満たす十分な生産能力がある」と発言し、翌日、企画財政部はマスク輸出禁止措置などを発表した。だがそうしている間も、長時間並んでもマスクが購入できない状況は継続している。文在寅政権は自身の失政を一切認めず、自画自賛を繰り返してきたが、さすがにこの状況はまずいと思ったのか、二度も謝罪する状況に至っていた。

 ただ、二度あることは三度ある。文大統領はこの先、再び謝罪しなければならなくなるかもしれない。上記のようにマスクの供給量を増やすための強引な手法は、むしろマスクの供給を減らす可能性があるからだ。文大統領は共産主義国で生産性が低い原因を理解していないのだろう。

韓国経済は社会主義化へ
レッドチーム入り着々と

 韓国ギャラップの調査によれば、最近1カ月で回答者の46%は所得が減ったという。特に、自営業者は9割が所得の減少を経験している。こうした状況は、所得の格差を一層広げるだろう。これを反映したのか、1月の消費は9年ぶりの大きな減少幅であり、2月の1日当たりの輸出も11.7%減少した。

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 しかし、景気の本格的な落ち込みが始まるのはこれからである。中国からの原材料の供給が滞って、現代自動車などが一時国内の操業を停止した。中国の生産停止は韓国の原材料輸出に跳ね返ってくる。世界103カ国が韓国からの入国を禁止したり、韓国人の行動を制約しており、これが韓国との取引の妨げとなり始めている。

 文政権は所得主導で経済を好転させようとして失敗した。昨年のGDP成長率は終盤に財政支出を増やし、やっと2.0%に達したが、そのうちの公的部門の貢献は1.5%であり、民間部門は0.5%に過ぎなかった。失業率はほぼ横ばいといっても、雇用が増えているのは高齢者で、政府支出で作り出した雇用だった。

 これから凄まじい景気後退が韓国経済を襲う中で、政府には公的部門の成長で何とか経済を維持させる以外に方法はないだろう。民間部門の停滞を政府主導で誤魔化すしかないのだ。韓国経済はますます補助金漬けとなっていくだろう。勢い余って、政治や社会も社会主義化しなければいいのだが。

(元駐韓国特命全権大使 武藤正敏)