基本の完成度は、プレッシャーのかかる場面で現れる
気をつけないといけないのは、70%くらいの完成度になっていると、練習レベルでは99%の人と差があまりないと錯覚してしまうこと。さらに、基本の技でミスをして負けても、単なるケアレスミスと勘違いしてしまうことです。
プレッシャーのかかる場面や複雑な場面になると、基本の完成度の差が現れるのはよくあることで、これは「必然のミス」です。不意に九九を聞かれて答えられないようでは、数学のどんな試験でも使い物にはならないですよね。それと同じことです。「平凡だ」と感じるまで仕上げるとは、どんな大舞台、どんな非日常の場面でも、何も考えず技が出せるくらいの完成度に仕上げることをいいます。
お互いに落としたら終わりの最終ラウンドで、僕の体力はほとんどゼロ、軽いジャブだけで倒されてしまう。一方、相手の体力には余裕がある。残りタイムも考えると、逆転には「中足払いキャンセルクリティカルアーツ」を当てなくてはならない。状況的に相手もこちらの狙いはわかっている─。僕らプロが勝負しているのは、こうした切羽詰まった場面ばかりです。
僕は近年、こうした状況で狙い通りに技を決め、逆転できるようになってきました。普通の技を普通に決めることこそが、僕の強さ。センスも反応速度もない凡人の僕にとって、「基本」は何よりも強力な味方になってくれています。そして誰もが驚く劇的なプレイも、そのような確実なプレイの延長にあるのです。