正当な人事評価でも
不満はなくならない

 多くの人が人事評価に対して不満を持つのは、この「ポジティブ・イリュージョン」のせいに他ならない。

 たとえば、「自分は平均以上の成果を上げている」と思っている人が7~8割いるとすれば、実際にはその内の約半分の人は、実際には「平均より下」か「平均程度」である。つまりポジティブ・イリュージョンにより自分の業績を著しく過大評価していることになる。

 そのような人たちは、実際には周囲の人たちと比べて業績が見劣りする場合でも、自分は人より成果を上げていると思い込んでいる。だが、平均以下の成果しか出していない人物に平均以上の評価を与えるわけにはいかない。その結果、人事評価に不満を持つことになる。

 アメリカで行われた調査でも、管理職の90%が自分の能力は他の管理職より優れていると考え、86%が自分は他の管理職より倫理的だと考えているというデータが示されている。また、大学教授の94%が自分は平均より優れた業績を上げていると考えているというデータもある。

 いずれも統計的にあり得ないデータだが、ここまで自己認知がゆがんでいるとしたら、平均より劣ると評価された人の約半数は、「自分は正当に評価されていない」と思い込み、不満を持つだろう。つまり、仮に人事評価を正当に行うことができたとしても、ポジティブ・イリュージョンにより、社員の不満はなくならないのである。